再会
エルフはみな、煌びやかな白金の髪に美しい緑の瞳を持ち、生まれてくる。
そのため、遥か昔から、醜い欲望を抱いた人間共に狙われてきた。
…無論、全ての人間がそうではない。憎み合っていたが、時には共闘さえしたと聞く。そんなこと信じられないが長老たちには実際に経験したという。あの方達が嘘をつく理由がない。真実だと思う。
その永き時を生きた長老たちですら、見たことがないという黒髪のハーフエルフ。
我が愛すべき姉の子、だ。
顔立ちは姉に良く似ている。が、耳は人間のそれに近く、何よりも、髪の色が違う。黒なんて、卑しい下賎な人間の色だ。
欲望の黒。
おぞましい色。
闇の色。
光の聖地に生きるエルフには有り得ない色。
里を出た後の姉は連絡を寄越したのは一度きり。生まれたばかりの子を里に置きに来た時だけ。
姉が何をして、誰との子を、どうして置いていったのかはわからない。
「父親は人間だけど、この子をお願い。」
それだけ言って詳しいことは訊けぬまま立ち去ってしまった。
愛しい姉の子。
おぞましい人間の子。
下賎な色を持つ子。
せめて、色が違うなら。半分は姉の血なのだ。愛してやれたかもしれない。
だが、色を見るたびに憎しみが沸き起こる。その色に、人間に、一体どれだけ苦渋を舐めさせられてきただろう。
エルフと人間が仲良く、なんてできるわけがない。
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手のりサイズの子猫、フウちゃんはふわふわのかわいいしっぽをふりながらフンフンと匂いを嗅いでいる。
頭を指で撫でるともっと撫でろと言わんばかりに私の手に擦り寄ってこちらをみてにゃあと鳴く。
ああ、フウちゃんだ。私の家族だ。最初のフウちゃんっぽい突撃はもちろん本人(本猫)なのだから当然である。しばらく再会を喜んでスキンシップに励んだが、なお私は全然足りない。しかしふわっと欠伸をしてジーっとある方向を示すとフウちゃんはまた光の粒になって肩と髪の間辺りに潜り込んでいってしまった。
不安になって「フウちゃん?」と呼びかけると頭の中ににゃ〜おと眠そうな声が聞こえた。よくわからないが消えたわけではなく姿が見えなくなってしまっただけらしい。
一安心した私はやることがなくなってしまったので、フウちゃんが示した方へと歩き出した。
なにかこちらにあるのかもしれないし、ないのかもしれない。でも先程とは打って変わって、今の天気のように晴れやかな気持ちで明るく例のテーマソングを小さく口ずさみながらテクテクと歩いて行く。
だって1人ではないのだから。今なら本当にどこまででもいける気がする。さっきは口ごもってはっきり言えなかった歌詞が嘘偽りなくいえる。
私は元気だと。どんどん歩いて行こうと。
他の家族がどうなったのかわからない。でもフウちゃんと一緒ならどこまでだって歩いていける。フウちゃんがいたのだからこの世界のどこかにまだ私の家族がいるのかもしれない。
希望が、目的ができた。家族を探そう。
なにもわからないとグズグズと泣いてるよりよっぽどいい。