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異世界転生?

初長文投稿です。拙い文章ではありますがのんびりやっていきたいです。

それは家族旅行の帰りだった。楽しい非日常が終わりいつも通りの普通の生活に戻るのだと余韻に浸りつつ流れる景色をぼんやり眺めていた。


突然激しく鳴り響いたクラクション音と急ブレーキによる浮遊感、視界の隅には迫りくる物体。


痛みはなかった。どこか現実味のない風景を眺めるように私は視界を埋めるほど近づいてくるトラックに為すすべなどなく。

私の記憶はそこで途絶えている。




ハッとして目が覚めた。全力疾走したように忙しなく息をする。バクバクとうるさいくらいの鼓動が聞こえる。辺りは薄暗くぼんやりと見える程度だ。じっとして現状を把握しようとする。痛みはなかった。手も足もあるし指が動く感覚もある。五体満足、視界良好、意識明瞭。遠くで誰かを呼ぶ声がするから聴覚も問題なし。


「……ゆ、め…ぅ?」


しばらく声を出していなかったような掠れ声に驚く。そして酷く喉が乾いてる。直前の記憶が正しいなら、家族で温泉旅行に行った帰りにトラックが突っ込んできたはずだ。もしかして私は重症で病院に運ばれたのかもしれない。けど、壁は白くないし病院といえば必ずといっていいほど充満している消毒液の匂いがしない。ナースコールのようなものも見当たらないし第一に今自分が横たわっていた場所はお世辞にもベットとは言い難い。

……嫌な夢を見た、と思いたかった。もしくは、今現在が夢であってほしいと。しかしそれにしてはやけに鮮明で感覚も実感もある。私は間違いなく日本で生まれ育った生粋の人間であると確信している。名前も経歴も、小学生の頃の恥ずかしい失敗談から、初恋の相手までいえる。その記憶がある。

だがしかし今この時も現実であると、震える手で顔や身体をペタペタと触り、確認して夢ではないと思っている。

…これが本当に夢であるならば、あまりにもリアルすぎて胡蝶の夢をバカにできない。夢と現実の区別がつかないなんて理解ができなかったが、改める必要がある。

見慣れたよくある現代日本家屋の自分の部屋を思い出しながら、見覚えのない部屋と粗末な寝床を見やる。

今現在も間違いなく現実なのだと身体の感覚が訴えている。


視界に入る、やけに小さな子供のような手の平を眺めながらこれまたぼんやりとしていた。




ドンドンドンドンドン!!!!


「いつまで寝てるの!! 早く起きな!!!!」



ドアを叩く音と怒鳴り声にビクリと体が跳び上がる。


「何度も何度も呼んでいるでしょう!? さっさと準備をなさい! 今日は忙しいのよ!!」


怒りの形相の金髪の女性が突撃してきて、怒鳴る。その声に、顔に、存在に恐怖するように身体がガタガタと震える。


この人、いや"耳の長いエルフ"は、私の‘おばさま’だ。


「っ、ごめ、んなさい、おばさま…いま、おき、ました…!」


与えられている家事をしに急いでベットから跳ね起きて途中転びそうになりながら精一杯駆け出した。



はやくいわれたとおりにしないとまたぶたれてしまう。



乱暴に扉を閉める音と足音荒く後をついてくる影に怯えながらまずはじめにやる事を必死で考える。



そう、まずはみずをくんでこないと。



必死に家の見取り図や必要なものを思い浮かべながら、段々と‘現状’を思い出してくる。


『わたし』に両親はなく、エルフである母親の妹である夫婦の家に居候させてもらっているのだ。その代償に家事の殆どをしている。だが、あまり良い感情を持たれておらず、何かにつけては打たれたり蹴られたり、殴られる。

昨日は一層ヒドイ暴力を受けて身体の節々は痛い。ボロい服を捲ればいたるところが鬱血し見るも無残な有様だろう。


なぜ、私は幼いこの体で覚醒したのだろうか。私はこの体を乗っ取ってしまったのだろうか。それとも奥底に眠っていた私の記憶が呼び覚まされて入れ替わったのか。この体の持ち主の意識は? 私は本当に私なのか? これは俗に言う異世界転生というやつ?


どうしてこうなったかはわからない。知る術もなかった。





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