返事
「ごめんね。ふたりとも」
店を出て、おれたちは近くの公園に移動した。
彼女は一通り泣くと、おれたちに謝罪した。
「いや、おれも」
「ううん、山田くんが謝ることないよ。むしろ、嬉しかった」
「そう言ってもらえると、おれも助かるよ」
そう言うと、佐藤さんはやっと笑ってくれた。
「じゃあ、おれはそろそろ席を外すよ。あとは、頼んだぞ。金田」
「ああ」
おれはそう言うと、その場から離れようとした。
「待って」
おれは佐藤さんに呼び止められた。
「どうしたの」
「山田くんも一緒にいて欲しい。いいよね、金田くん?」
「うん」
とんでもないことになってしまった。
※
「佐藤さん、この前の返事なんだけど……」
金田もやりにくそうだ。告白の返事に、なぜか自分の親友が同伴するんだ。そりゃあ、やりにくいだろう。
「うん」
彼女は、凛とした顔で金田に向き合った。もう、迷いのない表情だった。
「とっても嬉しかったよ。でも……」
金田は、きちんと佐藤さんに向き合っていた。
「うん」
「ほかに、好きなひとがいるんだ。だから、ごめん」
金田も結論に辿り着いたらしい。
「そっか。ありがとう。わざわざ、ここに来てくれて、返事をくれて。本当に嬉しいよ」
「本当にごめん」
「そんなに謝らないで。それに知ってたし。ね、山田くん?」
「うん、バレバレだった」
そう言って、おれたちは笑いあった。
「じゃあ、おれたちそろそろ帰るよ」
「うん、今日はありがとう。落ち着いたら、必ず連絡するから」
彼女はそう言って笑った。
「うん、約束だぞ」
「じゃあ、またね」
そう言っておれたちは、別れた。
「これでよかったんだよな」
公園を出た後、金田はそう言った。
「まだ、ヘタレてるのかよ」
「そんなんじゃないけど」
「帰ったらすぐに、蒼井さんに連絡だな」
そう言って笑いあった。
そして、おれはひとつの決心をする。
「悪い、金田。忘れ物をしたみたいだ。先に帰っていてくれ」
へたくそな嘘だった。金田も苦笑いしている。
「わかった。気をつけてな」
「おう、ありがとう。蒼井さんにもよろしく」
「じゃあ、月曜日」
そう言っておれたちは解散する。
別々の道を歩みはじめる。
「おい、山田」
少し離れて、金田は大声で言った。
「頑張って来いよ」
おれは無言でうなづく。心の中で、「お前もな」と返した。
おれたちは、走り出した。




