衝撃
おれたちはそのまま始業式を向かった。
いつもの長い挨拶などを適当に聞いて乗り切った。少しだけウトウトしていた。まだ、休みボケしているようだ。おれの体は……。金田は完全に寝ていた。昨日は遅くまで深夜アニメを(以下略)。
まあ、今日はほとんど流し運転で、昼間まで学校は終わるので、その後は図書館ででもゆっくりしようとおれは思っていた。
しかし、そんな気分は、吹っ飛んでしまったのだ。
事件は、始業式終了後の教室で起きた。
「おい、金田。また、おまえ寝ていただろう」
「しょうがないだろう。眠かったんだから」
反省はしている。だが、後悔はしていない。そんな表情だった。
「おい、山田・金田。大ニュースだぞ」
相田が駆け込んできた。どうせ誰かが誰に告白して、振られたとかそんなネタだろう。そうに決まっている。というか、それ以外は認めない。新しいリア充の誕生なんて歴史、修正してやる。
「なんだ? また、恋愛系か?」
金田も同じ想像をしていた。
「そうだと言えばそうなんだけど、違うといえば違うんだよな」
相田は煮え切らない態度だ。
「早く教えろよ」
おれがせかす。
「ああ、悪い」
相田は、少しだけ表情が強張った。
「A組の佐藤さんが転校したらしい」
時間が止まってしまったように感じた。
体が急激に冷たくなるような感じがした。
「えっ」
「えっ」
「だから、A組の佐藤さんが転校したらしい」
さっきと同じ言葉だった。
「佐藤さんって、あの佐藤さんだよな?」
おれはたまらず、相田に聞きなおす。
「そうだよ。山田が片思いしていた佐藤さんだよ」
「……」
「……」
絶句という言葉はこういう時に使うものなんだと、おれは思った。驚いて、声がなにも出せなかった。
金田も同じだった。
「おい、ふたりとも、大丈夫か?」
相田は固まってしまったおれたちを心配してくれた。
「ふたりとも、仲が良かったんだろう? 聞いてなかったのか?」
おれたちは答えられなかった。
金田はきゅうに立ち上がって、走り出した。いつの間にか、おれも同じ行動を取っていた。
目的地は言わずもがな。A組の教室。自分の目で確かめなくては納得できなかったのだ。
その残酷な事実を……。




