表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金持ち彼氏と貧乏彼氏  作者: D@2年連続カクヨムコン受賞
最終話 つたわる思い
84/96

新学期……

 昨日の金田のための、勉強・ブート・キャンプも無事に終わり、ついに新学期がはじまった。

 まだ暑い九月の朝。おれはだるい体を引きずって、通学路を歩いた。

 ミーンミーンというセミの声まで聞こえてくる。完全にまだ、夏じゃん。制服が汗だくになる。


「おう、山田。おはよう」

 通学路で友達とすれ違う。みんな一様にだるそうな表情だった。

 なにかの拍子に、夏休み延長のお知らせでもでないものだろうか?

 今の温暖化の時代、九月は秋ではない。夏だ。旧時代の悪しき伝統を、日本人は引きずりすぎている。もっと、世界規模でグローバルな視点を持たないといけないんじゃないのか。そんな、意識高い系の発送まで出てくる。というか、世界規模もグローバルも同じ意味じゃね? こころの中でおれはツッコむ。非常にむなしい二学期の幕開けとなった。


「おう、山田。昨日はありがとうな」

 金田が教室に入ってきた。今はケロッとしている。昨日の惨劇はもう忘れてしまったらしい。こいつは、来年も繰り返すぞ。

「どうした。浮かない顔して」

「いや、来年のいまごろを妄想していただけ」

「ああ、受験生だからな」

「いや、そうじゃなくて」

「???」

 こいつは……。もういいや。


「夏はおまえたちどこかいったのか? ゴールデンウィークみたいに」

 同級生たちがそうはやしたてる。まだ、あのネタが続いているのか……。

「ああ、金田の別荘に行ってきた」

「「「おおお」」」

 クラスからどよめきが起きる。これは、また変な噂が作られるんだろうな。


≪全盛期の金田・山田伝説≫

・オタクグッズ目当てで、ハンバーガー屋でエキサイトセットをドヤ顔で注文する。

・ついでにスマイルゼロ円も注文。

・それを毎週おこない、店員に顔をおぼえられる。

・店員間でついたあだ名は、“スマイルのひと”

・ゴールデンウィークには、恋人たちの聖地におとこふたりで突入。

・そこで、鳴らすと幸せになる恋人の鐘を衆人環視のもとドヤ顔で鳴らす。

・帰りの電車で痴話げんか。

・旅行帰り後、金田の幼馴染と三角関係。

・夏休みは別荘の同室で、暑い夏を過ごす(←NEW)


 こんなのが今頃、クラスの裏メッセージで回っているんだろうな。おれの青春はハードモードすぎる。モノローグまで意味深になってしまったことに気がつき頭を抱えた。でも、これがいつもの日常だ。そこに、安心している自分がいた。これは重症だな。


 しかし、これはおれの日常ではなかったのだ。もうすでに、日常ではなかった。それをおれは知らずにいたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ