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金持ち彼氏と貧乏彼氏  作者: D@2年連続カクヨムコン受賞
第九話 なつやすみ後半
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片思い

 さっきの言葉で硬直する。完全にばれた。というか、絶対に隠せていなかった。少しだけ気まずい思いになる。おれは、からかわれ続けているのか。

「山田くんって頭はいいのに、ひとが良すぎるね」

「ぐぬぬぬ」

 

 やられたらやり返す。倍返しだ。

 そう思って、おれは彼女をからかう。


「そういえば、佐藤さん。金田からの返事ってあったの?」

 少しツッコみすぎたかもしれない。少し心配になる。

「あー、それ聞いちゃいますか」

「聞いちゃいますよ」

「それに関しては、ノーコメント」

「えー、ずるいよ」

「わたしじゃないよ。金田くんがノーコメントなんだよ」

 彼女は少しだけ頬を膨らませた。

「そっちね」

「そう、そっち」

 おれが神妙な顔をすると、彼女は笑いだす。


「どうして、山田くんがそんなに悲しい顔するのよ」

「え、そんな顔していた」

「うん、すごく悲しそうだったよ」

「今日は、わかりやすくて困っちゃうな」

「いいじゃない。そのほうが……。とても素敵なことだと思うよ」

「ありがとう」

「でも、お人よしすぎるよ。自分にとっては、最大のチャンスじゃない」

「うう」


 少しずつ、駅に近づいてきた。もう少しで、この楽しい時間も終わってしまう。

「あまり、気をつかわなくていいからね。金田くんへの告白は、本当にダメもとみたいなものなんだから……」

「うん」

「本当はね。ずっと片思いしてようと思っていたんだ。中等部のころからね。ずっと続いた片思い」

「そうなんだ」

「うん、そうなの。金田くんにわたしは救われたんだ。だから好きになった」

「……」

「でも、彼にはイズミちゃんがいた。遠くからみただけでも、わかる。あのふたりの関係性に勝てるわけがない」

「うん」

「いまは、近すぎてお互いのことがよく見えていないだけなんだと思うんだ。少し冷静に見たら、おさまるところはひとつだと思う」

「じゃあ、どうして、告白を……」

「それは、山田くんのおかげかな?」

「おれのおかげ?」

「山田くんが、わたしに告白してくれたから。本当に嬉しかったんだよ。あの時、ちょっと嫌なことがあってね。自己嫌悪していたの。でも、あなたは、わたしのことを認めてくれた。好きなってくれた。こんなわたしのことを……。だから、わたしも素直になることができた」

「うん」

 複雑な気持ちだった。

「本当にありがとう。そして、大変な役割を押し付けてしまって、ごめんなさい。わがまま言いすぎました」

 彼女の謝罪の言葉をおれは無言で聞いていた。

 

 そして、駅に到着した。

「今日はありがとうね。会えてうれしかったよ」

 彼女は寂しそうにそう言う。

「うん。じゃあ、またね」

「うん、じゃあ」

 彼女はそう言って街並みに消えていった。


 空を見上げた。夜空はよく見えない。

「おれも帰るか」

 そう言って、家へと帰ろうとすると……。

「あれ、山田くんじゃない」

 女性の声に呼び止められた。

「蒼井さん……」

「こんばんは!」

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