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金持ち彼氏と貧乏彼氏  作者: D@2年連続カクヨムコン受賞
第九話 なつやすみ後半
77/96

普通

 ついに、金田たちとの旅行も終わってしまい、おれは普通の夏休みにもどった。

 兄貴は仕事に行ってしまうので、家でひとり。咳をしようが、そうめんを食べようが、ひとり……。

 しかたないので、図書館に行って勉強をし、帰ってくるを繰り返していた。


 ああ、金田の別荘という“エデン”に戻りたい。あの別荘生活が夢のようだ。常に冷房が利いていて、美味しい食事は作ってもらえるし、海で遊べるしと最高の環境だったのに……。もう一度だけ、遊びに行きたい。かぼちゃの馬車が迎えに来てはくれないだろうか。


 このままで、残りの夏休みは、そうめんと勉強だけで終わってしまう。しかも、彼女はいないから、リア充的な活動はできない。宿題は合宿前に終わったので、ハラハラドキドキの締め切りデッドヒートも起きない。おれが神さまだったら、夏休みが何万回もエンドレスしているな。


 貴重な高校二年の夏休みがこんな感じで終わってしまうのだ。来年は受験生で、こんなゆっくりできる保証はない。でも、金田の別荘にはもう一度行きたい。


「どこで、ルートを間違えたんだ」

 そうめんを茹でながら、おれはぼやいた。こんなはずではなかった。どこをどう間違えれば、ギャルゲー主人公の親友ルートという袋小路に行きつくんだよ。主人公の三角関係(一角は、自分の片思い相手)を横から見ているとか、悲惨すぎるだろう。おれの青春ラブコメは(以下略)。


「神さまのチェスを横から見ているだけの人生だった」

 昔みたラブコメドラマの名台詞を思いだしてつぶやく。

 まだまだ、青春真っただ中の高校生が言うセリフではなかった。


 家にずっといると気分が滅入ってしまう。

「図書館いくか」

 やっぱり、いつもの行動になってしまうおれだった。

 昼過ぎての外は、かなり暑かった。でも、図書館は冷房が利いてるはずだ。

 今日は、午前中に勉強したから、たまには本でも読もうかな。この前かりた『オラクルナイト』は読み終わったので、同じ作者の作品を借りてこよう。そうしよう。

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