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帰路

 昼食は、漁師のパスタとコンソメスープだった。シーフードとトマトソースが鮮やかなパスタと、野菜がたっぷりと入った優しい味のスープ。管理人さんの美味しい料理もこれが最後だ。明日からは、また地獄のそうめん生活が待っているのか。明日からの自分の昼食風景を想像すると、かなり悲惨だ。嫌な未来を想像してしまった。


 おれたちは、名残惜しそうに昼食を完食した。トマトを中心とした野菜とシーフードのうま味。ああ、海辺の町最高だ。この家の息子になりたい。


「本当に美味しかったです」

 おれは、食事を終えて、管理人さんにそう言った。

「それはよかった。久しぶりに、他のひとに料理を振る舞えたので、わたしも嬉しかったですよ。また、来てくださいね」

「ありがとうございます」

 ちょっと、しんみりした会話だ。三日間お世話になって、美味しい料理まで作ってくれたのだ。寂しくなるに決まっている。

 話し終えて、部屋に戻ろうとおれは台所からでようとする。

「ああ、そうだ」

 さりげなく、管理人さんに呼び止められた。

「これからも、坊ちゃんと仲良くしてあげてください」

 まるで、孫のことを楽しそうに話す祖父のような顔だった。慈愛にあふれている。

「もちろんですよ」

 おれは、力強くうなづいた。それが少しでも恩返しになるなら、なおさらだ。


 部屋で後片付けをする。二日ほど過ごしたこの部屋に、少しだけ愛着がわいていた。この別荘では、いろんな思い出ができた。バーベキュー、海水浴、大浴場、夜の海岸、トランプ大会、アニメ鑑賞、徹夜……。

 そんなアンニュイな気分になって、後片付けを終える。

 そして、金田は……。

 

 ベッドでいびきをかいて寝ていた。せっかくの気分が台無しである。

 このまま、放置してもいいんだけど……。

 さきほどの管理人さんの笑顔を思いだして、起こしてやった。おれも眠い。


 こうして、おれたちの旅行は終わった。

 帰りの車内は、案の定、みんな寝ていた。おれももちろん不足している睡眠時間を補った。


――――

 さっき撮った写真を送るね。

――――


 いつの間にか、みんなのスマホには、四人で撮った集合写真が添付されたメッセージが届いていた。

 その写真のなかではみんなが楽しそうに笑っている。

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