お土産
朝食を食べ終わったおれたちは、近くにある土産物が売っている売店に向かった。
「徹夜明けに、真夏の日差しはきつすぎる」
「禿同」
おれたちはクタクタだった……。
「お土産、何を買おうかな?」
「ねー」
女子二人のテンションと反比例しているようだ。
しかし、土産物屋に着くと、
「おー、これはご当地限定のキーホルダーじゃん」
金田は華麗に復活した。オタクの力、萌えの力は偉大なり。
「もう復活したのかよ」
おれは呆れを通り越して、ため息しかない。
「だって、このキャラクターがおれに話しかけるんだぜ。“止まるんじゃねぇぞ”って」
「金田さん。それはもう死に際にいうセリフですよ」
たぶん、眠らな過ぎて、頭がやばいのだろう。
「でも、このキャラ、山田の兄さんも好きなやつだぞ」
「そうなのか。どうして、おれよりも詳しいんだ?」
「だてに、SNSで、相互監視してないからな」
なんだか、物騒な用語がでてきた。聞かなかったことにしよう。
「じゃあ、おれもひとつ買っておこう。少しは小遣いもらってきたし」
「んだんだ。兄孝行するんだっぺよ」
金田はきゅうににわか方言を口に出す。こいつの頭は完全ホールドだ。おれも、意味が分からないことを供述しはじめている。
「とりあえず、キーホルダーを選んだからお菓子でも買っていくか」
土産と言っても、あとはお菓子くらいでいい。あげるひとは兄貴くらいしかいないからな。
お菓子売り場には、女子二人がいた。
「ふたりともなにか買った?」
「ああ、山田くん。わたしたちはサブレ―だよ」
鳥を形どったサブレーだ。たしかに有名な銘菓だ。
「おれもそれを買っていくか」
外れない、安定路線だ。
「金田くんはどうしたの?」
佐藤さんはきょろきょろしながら聞いてきた。
「むこうで、ご当地限定アニメグッズを買い込んでる」
「「ああ」」
ふたりとも短くはっきりとした声で呆れていた。
こうして、土産物屋で用事を済ませると、おれたちは別荘に戻った。
最後に昼食を食べて、今回の合宿はこれで終わりとなる。
なんだか、とても寂しい気持ちだ。まだ、夏休みは残っているのに、それがすべて終わってしまうような気分だ。金田が言うように、何回でも夏休みを繰り返したい気分になる。
「ねぇ、三人とも……」
佐藤さんが遠慮がちにこういった。
「最後に写真撮らない? 旅行の思い出にさ。海をバックにして」




