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展望台

 そして、おれたちは、島の頂上にある展望台についた。

 ここからは、海と街が一望できる最高の場所だった。もちろん、リア充たちがたくさんいた。いや、たくさんなんて、生ぬるい。大量だ。見渡せば、リア充の山。リア充の人海戦術。それに対して、おれは……。

「友人の三角関係に巻き込まれているアカウントはこちらになります」

 自分で言っていて、虚しくなる。


 おれたちも、展望台の一番上まで進む。

「金田。こんなところにいると叫びたくなるな」

 おれはそう言った。この虚しい心境を、急に吐露したくなったのだ。

「なんだ、海賊王にでもなるつもりか?」

「いや、どちらかというと、機動戦士系」

「なぜに?」

 金田は疑問そうな顔になっていた。


 おれはもうひとりのおれと妄想世界で戦っていたのである。これは、おれの意識たちの決闘である。おれの意識は、展望台を離れて、遥か彼方の宇宙要塞の中にいた。

「本当の敵は、“リア充たち”じゃないのか?」

「わたしにとっては違うな」

 おれの意識たちはフェンシングの試合をしていた。無重力空間で、ただよいながら……。

「リア充たちがいなければ、きみはリア充になりたがらなかった」

「それは理屈だ」

「だが、正しいものの見方だ」

 おれたちのヘルメットが勢いよくぶつかりった。

 はたして、おれはいったい誰と戦っているのだろうか。


 そんなおれを見ながら、金田は言う。

「ヘルメットがなければ、即死だったのか?」

「どうして、おれの妄想がわかるんだ」

「長い付き合いだからな」

「たった、一年のくせに」

 そう言いながら、笑いだす。


「いつもと、逆だな」

 これは、チャンスだ。さきほどから、感じていた違和感を確認するための。

「どういうことだ?」

「いつもなら、金田がネタに突っ走って、おれがつっこむだろう」

「たしかに……」

「今朝から、様子変だけど、なにかあったのか?」

 ずっと、感じていた違和感を問いただす。

「ああ、ちょっとな」

 なんだ? 本当に調子が悪いのか。「大丈夫か?」と口にだそうとした瞬間……。


「お熱いね。ふたりとも」

 蒼井さんが、そう茶化してきた。

「そんなんじゃねえよ」

 そう言うと、金田は行ってしまう。またも、大事な話を聞くことができなかった。

 これが、まさか世界線を変えてしまうことになるとは思わなかったのだ。

 そう、この時点では……。

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