神社
橋を渡ると、そこはTHE・観光地という光景が広がっていた。
狭い通路の両脇に土産物屋やレストランが並んでいる。
そして、
「カップル多いな~」
みんなが思うことを口にしたのは、金田だった。
「まあ、縁結びに定評がある神社らしいからね」
佐藤さんがそうフォローする。
「縁結びね~」
金田は、なんだか憂鬱そうだ。
おれはリア充を駆逐してやりたい気分に駆られる。
「いいじゃない。女の子はこういうところ好きなんだよ」
蒼井さんがそうフォローした。恋敵の本心を知っているのに、この娘はどんだけ聖人なんだろうな。おれは、正直にそう思った。
人ごみに流されながら、おれたちはどんどんと階段を登っていく。
金田は口を開いた。
「こんなにカップルが多いと、ゴールデンウィークのことを思いだすな」
「おいやめろ、やめてくれ。あの黒歴史を思い出させないでくれ」
「えっ、あの伝説の苦行?」
佐藤さんはノリノリで話に入ってくる。
蒼井さんは苦笑いしている。
「そうそう。こいつと、恋人の鐘を……」
「わーわー」
おれは、黒歴史を自主規制した。あんなことは、マウンテンサイクルにでも投棄したいのだ。
そう言う話をしながら、おれたちは神社についた。
「ここが縁結びで有名なんだな」
そこらじゅうに、リア充たちがラブラブと絵馬やお参りをしていた。
たしかに、恋愛は、人生前半の最大のイベントだしな。だから、みんな普通のことをしているんだよ。嫉妬に錯乱しながら、おれは心で毒づいた。
「せっかくだから、おれもお参りしていこう」
「おまいう」
さっきの口が渇く前に、金田は手のひらを返した。おまえの手は、いつかけんしょう炎になるぞ。と、言いつつもおれも財布から五円玉を取りだした。
特に恋愛に関して祈ることはなかった。もう、絶望的な状況だ。チェックメイトが二回以上、発生している。
だけども、ここが縁結びの神社であるならば、おれはひとつだけ祈りたいことがあった。
とても臭い話になってしまう。でも、こころのなかでならば言える。
(なんがあっても、どうかこの四人の関係が結びついていますように)と。




