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始まり⑤

 ふたりの笑いがおさまった後、おれたちは勉強を始めた。

 明日の数学の宿題だ。おれの場合は、もう終わっているのでふたりに教えることだけだ。

 とはいっても、蒼井さんは成績が良いので、すぐに終わってしまう。正直、教えることはほとんどなかった。たぶん、金田と遊びたいがために、教えてもらうことを名目にきたのだろう。

 そして、金田は……。


「むりいいいいいいいいいいいいいいいいいい」

 問題が解けなくて、ゴロゴロしている。まあ、いつもの光景だ。

 こいつは地頭がいいくせに、やる気がない。勉強している時間を切り捨ててでも、趣味やバイトに生きると宣言している。うちの高校の場合、付属の大学があるので、落第しなければ大学進学できる。だから、必要最低限のことをやるつもりらしい。実にうらやましい。これだから、ボンボンは……。


 おれの場合、付属大学は学費が高すぎるので無理だ。だから、近くの国公立目指すしかない。いまの奨学金のおかげで、少しずつ大学の学費が貯まってきた。しかし、成績が下降したら、即死亡。「勝ち続けなければ、生き残れない」のだ。


 金田にやるきを出させて、おれは適当に問題集を進める。できる限り先行しておかなくてはいけないから、こっちも必死なのだ。


 一時間後。

「おわったああああああああああああああああああああ」

 金田は、まるでワールドカップの出場が決まった選手のように喜んでいた。

 おれもとりあえずは勉強を終わりにする。金田に淹れてもらったアールグレイはもう冷めていた。


「よっしゃ。ゲームしようぜ」

 金田は、ゴソゴソとゲーム機を用意した。ソフトはみんなでできる操作が簡単なレースゲームだ。

 おれも、ここに遊びに来たときしかゲームはしないのでちょっと嬉しかった。正直、いまのハードは貧乏学生には、ちょっと高すぎる。

「山田、いっておくがこれは“闇のゲーム”だからな」

 やつは怪しい笑顔でそう言った。この発言がでたときは、なにがなんでも勝ってやるという宣言らしい。

 イズミさんもコントローラーを持つ。


「3・2・1、スタート」

 金田はロケットスタートを決めて、一気にトップに躍り出る。赤い帽子のひげおやじが「ヒャッハー」していた。持ち主のくせに、ハンデなしとかずるいわ。

 おれは、早速、赤いカメを手にいれた。

 金田のひげおやじに向かって、無慈悲の一撃を決める。赤カメが金田のカートに激突して、大爆発した。

「ぐはははっはははは」

 金田の何かが壊れた音がする。

 おれたちの血で血を洗う規模の小さな仁義なき戦いが始まった。

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