よる
そして、おれたちは、トランプ大会を終えて、おとこ部屋に戻ってきた。
結局、おれはほとんど勝てないまま、ずっと大貧民ロードをひた走ったのだった。何度も≪革命≫を起こしたのにも関わらず、財力のパワーの前には歯が立たず、その都度鎮圧された。一度、≪革命≫が成功して、有頂天になったにも関わらず……。三十秒後に、蒼井さんに≪革命返し≫されて、死に至る病に罹患した。キルケゴールさんに謝れとか言われそうだ。
「こんなのって、ないよ。おかしいよ」
そう言いながら、おれは泣き崩れたのだった。金田は、「ぼくと契約して、大貧民になってよ」とのたまわっていた。
「楽しかったな、トランプ」
金田は上機嫌だった。勝者の余裕すら感じられる笑顔だった。
「だろうな、あんなに勝てたら、さぞかし楽しいでしょうな。金田坊ちゃん」
「ふははは、貧乏人の嫉妬かな」
くそう、なんて日だ。卓球でこいつに勝ってから、運をすべて使い果たしてしまったのではないか。くそう、もう少し≪運≫にステ振りしたかった。転職して、遊び人にでもなるしかないんじゃないか、この状況。
部屋に着くなり、金田はベットにダイブした。そして、そのまま寝入ってしまう。
よほど、昨日の徹夜と今日の疲労がたまったんだろう。その前までは、いろいろと準備をしていたそうだから、あいつはあいつなりにがんばってくれたのだろう。
管理人さんが言っていたことを思いだす。
―――――
「他人が求める理想像に、無理に近づけようとするところがあるのですな。そこが美点でもあり、欠点でもある」
―――――
たしかにな。この様子をみて、さきほどの会話に納得した。ある程度の能力があるせいで、なんでも自分でやってしまう。たまには、こっちにも頼れと思ってしまう。それほど、疲れ切った、しかし、満足した顔だった。見ているだけで、こっちまで満足してしまうような顔だった。
「こういう性格だから、モテるんだよな~」
おれは、横で寝ている親友に少しばかり嫉妬していた。
なんというか、完璧な主人公タイプで、仲間思いで、責任感が強くて、底抜けに明るい。こんなキャラだからこそ、神さまは≪主人公補正≫を与えるんだな。
それに比べて、おれは……。
「いかん、いかん。ネガティブになってるな」
おれはひとりごとを言いながら、ベットに横になる。それと同時に、枕元のスマホが鳴った。
相手は、隣の部屋に“彼女”だった。
――――
相談事があるんだけど、少しだけリビングに来れる?
――――
おれはすぐさま、下の階に向かった。




