バーベキュー準備
風呂から出た後、おれたちはリビングに集合した。
「楽しかったね、海水浴」
「うん」
女子二人はキャッキャウフフしていた。ああ、まぶしい。さっきの男湯の惨劇をみたから、なおさらだった。
その一方で、おれたちは……。
「どうしたの? ふたりとも。お風呂でのぼせた?」
「「うん」」
ふたりでふざけすぎて、長湯した。
「もしかして、ふたりとも……」
蒼井さんから、ゴールデンウィーク後に感じた負のオーラを感じた。もしかして、誤解されてるのか?
「いや、誤解なんだ、イズミ」
おい、金田。その言い訳は、大悪手だ。
「そうだよね」
あれ、蒼井さんの様子が……。まさか、進化キャンセル成功か。こころのBボタン押せたのか??
「最初は、みんなそう言うんだよね」
どうやら違ったようです。さよなら、世界。
「アッー、じゃない。けっして、アッーじゃないんだ、イズミ」
金田の悪あがきだけがリビングにこだまする。おい、やめろ。本当の惨劇が待ってるぞ。
「本当に仲いいんだね。三人とも……」
佐藤さんはそう言いながら、笑っていた。
ひと騒動あったが、無事?におれたちはバーベキューの準備をはじめることとなった。
とはいっても、管理人さんが面倒な魚の下ごしらえはやってくれているため、野菜を切って、肉と一緒に串に刺すだけの簡単なお仕事なんだが……。
「とりゃあ、金田流奥義<ヴラド・ツェペシュ>」
金田は大声でそう叫びながら、串を刺していく。
「ヴラド・ツェペシュってなに?」
蒼井さんは不思議そうな顔だ。
たしか、ドラキュラのもととなったワラキア公国の君主だ。苛烈な統治で、串刺し公と呼ばれていたとかなんとか世界史の資料集にでていた。
そんな、いつもの調子の幼馴染コンビをしりめに、おれは野菜を切り刻む。
ピーマンを半分に切り、玉ねぎを輪切りにして、エリンギを切る。切る。切る。無心になって、切っていた。
「山田くん、やっぱり手際イイね。いつも料理しているだけある」
「ありがとう。佐藤さんだって、慣れている感じだね」
「わかる? たまにやるんだ」
「へー、お嬢様ってあんまり料理とかしないイメージだから、意外だ」
まあ、金田のお母さんは料理しているけど、レシピ本だすくらいの人だから除外。
「う、うん。さいきん、はじめたばっかりだから、あんまり自信ないんだけどね」
彼女は少し苦い顔をしながら、そうはにかんだ。




