海水浴
「さて、遊ぶぞ!!」
金田は、意気揚々と海に繰り出していった。おれたちは、やつについていく。正面には、青く輝く海が広がっていた。
「しかし、夏なのに、がら空きだな」
そう、ビーチはほぼ貸し切り状態だった。明らかに不自然だ。これは、絶対に“金”の力が絡んでいる。これだから(以下略)。
「そりゃ、そうだよ。おれんちのプライベートビーチだからな」
やっぱりか。うん、知ってたよ。
「さて、泳ぐぞ」
そう叫んで、金田は海に飛び込んだ。
おれも続く。女子二人は、日焼け止めや水着に着替えるのに時間がかかるそうで、あとから来るそうだ。
「さあ、あの岩まで競争だ」
「ははは、おれを捕まえてみな」
「やったなー」
なぜか、男二人でお約束のシュチュエーションを潰していくおれたち。これでは、またあのネタが流布されかねない。しかし、この金田、ノリノリである。
「よし、水鉄砲を使ってFPSごっこしようぜ」
「FPS?」
「ようは、銃を打ち合うゲームだよ。先に三発くらった方の負けな。頭は即死ってことで」
好きな水鉄砲をえらべということで、おれは適当にかっこいい銃を選んだ。プラス水風船も二つ支給された。
「おう、拳銃か。じゃあ、おれはこのピーちゃんで」
金田は、独特な形状の水鉄砲を選んだ。長方形で、全体的に丸みをもっていた。なんか、変な呼び方をしている。きっと、アニメかラノベに影響を受けているのだろう。
おれたちは、適当に距離をとった。おれは岩の影に隠れる。
金田は泳いで、水の中から近寄る方針らしい。
「じゃあ、ゲーム開始」
金田がそう宣言すると、おれは岩の影から金田に向かって水鉄砲を発射する。
金田は水に潜って、それを回避すると、一気に間合いを詰めてくる。
おれは、意味もなく水を乱射する。
しかし、金田は水の中。やつはどんどんと近づいてくる。まるで、ジョーズだ。怖い、怖すぎる。
そして、やつはおれの近くにやってくると、ばしゃーんと音を立てておれに飛びかかってきた。おれは反撃で、水鉄砲を発射する、二発が金田の体に直撃した。よし、あと一発。そう思って引き金をひいたおれは、愕然とした。水が出ない。弾切れだ。
「おろかなり、山田よ。天誅」
金田の銃から発射された水が少しずつおれの顔に迫ってくる。すべてがスローモーションのように感じた。これなら、避けられる。余裕だ。しかし、おれの体も同じようにスローモーションとなっていた。少しずつおれの顔に冷たい感触が伝わってきた。終わった……。そう思って、おれはもっていたものをすべて投げ出した。
ばしゃんという音がする。
「くそう、引き分けか」
「えっ」
びっくりした。金田の顔もびしょびしょだった。さっき持っていたものをすべて投げた時、水風船も一緒に投げたのだ。それがたまたま、金田の顔に直撃したらしい。なんというラッキーパンチ。
そんなこんなで遊んでいると、ビーチから声がした。ついに今回のメインイベントの時間がはじまるのだった……。




