管理人さん
「こんにちはー!」
おれたちは早速、金田の別荘へと向かった。本宅も豪邸だが、別荘は別荘でかなり巨大だった。こんな別荘は、有名な少女漫画でしかみたことないぞ。みたのは、実写ドラマだけれど……。
「ようこそ、お待ちしておりました」
管理人の黒井さんが出迎えてくれる。六〇歳くらいの紳士だった。今回の旅行では、彼がおれたちの面倒をみてくれることになっていた。とても穏やかで優しそうな「THE・紳士」というおもむきがある。
「黒井、一年ぶりだな」
金田はフレンドリーにガンガン別荘に入っていった。まあ、自分の家の別荘だし、当たり前といえば当たり前なんだが……。
「「「お邪魔します」」」
おれたち三人は、その後に続く。佐藤さんと蒼井さんは堂々とした態度だ。さすがは金持ちの子女。きょどっているのはおれだけだった。住んでいる世界が違うんだなと少し寂しくなった。
「食堂に昼食を用意しておりますので、お部屋に荷物をおいてきてください」
黒井さんはやさしい笑顔でそう言った。さすがは、金田家の従業員さんだ。手際がいい。
荷物を置き、食堂に行くとシーフードをたくさん使った料理が準備されていた。食堂は本宅よりも狭いものの、高そうな絵画やらが飾ってあった。タコと海藻のサラダ、シーフードピラフ、トマトと魚介のスープ。全部、黒井さんが作ったそうだ。
「黒井はもとは本宅の執事長だったんだけど、歳をとってゆっくりしたいからとこっちに異動したんだ。だから、家事は基本的にプロ級だぜ」
なんだよ、そんなチート設定。異世界にいく必要ないじゃん。もうこれだから、金持ちは……。リア充と一緒に爆発して欲しい。
「坊ちゃんがいらっしゃるので、今回の昼食はワンピのバラ〇ィエ風にしてみました。明日の朝ご飯は、〇ピュタ風がいいですか。それともアルプスの少女風ですかな」
黒井さんはこんなことを言っている。還暦間際の人が言うセリフじゃないだろう。最初はなにを言っているのかわからなかった。単語と意味が一致しない状態で、ポカンとするおれたち。
「金田家で働くための基礎教養です」
おれたちがびっくりした顔でいると、察した黒井さんがそうフォローしていた。どんなところだよ、金田家……。魔窟? 伏魔殿?
「海で遊ぶための道具も用意しておきましたので、どうぞもっていってください」
なにからなにまで、完璧な管理人さんだった。いくつか覇気やら念が使えると言われても信用してしまいそうだ。金田家って本当におそろしいもんですね……。




