おさそい……
「ナンパってなに?」
あの禍々しい声を聞いたおれたちは、その後二時間の記憶がなかった。なんだか、偉大な世界とかにいってしまいそうな独白をした記憶だけがある。
な…何を言っているのか、わからねーと思うが、おれにもわからない。いつの間にか二時間が経過していた。ただ、それだけだ。
あとで、金田になにが起きたか聞いてみたが、返答は沈黙だった。
しつこく聞いても、「当局は一切関知しない」の一辺倒だった。どこのスパイ大作戦だよ。
「じゃあ、夏休み楽しみにしてるね!!」
蒼井さんは、最後はルンルンになって帰っていった。あの時の形相とは違って、ギャップ萌えだ。金田が萌えているか、燃えているかはしらないけれど。
「おじさんとか、おばさんとか反対しないのか?」
ちなみに、金田は必死にそう聞いていたが……
「反対するわけないよ。むしろ、どこでも行ってこいって言われてるくらい……」
共通ルートをすっ飛ばして、もう個別ルート確定ですか。そうですか。さすがは、幼馴染ヒロインですね。独り身のおれはどうしたらいいのでしょう。
あああ、リア充爆発しろ。
「じゃあ、おれたちもそろそろ解散しようぜ」
金田は、真っ白な灰になっていた。もうライフは燃え尽きている。まじで、リア充する五秒前のくせにどうしてこんなことになっているんだ。本当にふしぎなやつだ。
「ああ、そうしよう」
苦笑しながら、おれは答える。おれももう今日は限界だった。帰って早く眠りたい。
そう思っていた矢先、おれの携帯の上下に動いた。
さっき別れたばかりの、蒼井さんからのメッセージだった。
「さすがに、男の子ふたりと女の子ひとりは気が引けるので、佐藤さんも誘っておくね」
短いメッセージだったが、彼女なりにおれに気をつかってくれたんだろう。
その気持ちがとても嬉しかった。
リア充爆発しろなんて言って、ごめんなさい。もう、末永く爆発してください。
どんどん夏休みが楽しみになっていく。
でも、これはいいのかな。だって、佐藤さんは金田に……。
おれは考えるを止めた。




