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金持ち彼氏と貧乏彼氏  作者: D@2年連続カクヨムコン受賞
第五話 スポーツ大会!?
38/96

スポーツ大会➇

 第二セットは再び激戦となった。第一セットを制した金田が勢いのままに、攻めまくり、おれがひたすら受ける展開。まるで、腐女子が喜びそうな文章だ。いつもなら浮かびそうなオタクネタだが、当人たちは完全に試合に没入していた。そんな、余裕はなかった。


 一点を取られたら、一点を取り返す。やられたやり返す。倍返しをしたくてもできない均衡した戦いだった。もっと、もっと早く。金田の陣にボールを撃ち込まなくてはいけない。返球を早めなくてはいけない。おれはそれに集中する。


 金田のスマッシュが炸裂した。おれはなんとか反応して、ラケットをボールに当てる。しかし、ボールはおれのラケットには当たったが、衝撃をおさえることができずに、上へと向かって弾き飛んだ。これで九対九。ここから先は、意地と意地の張り合いとなる。

「ぐははは、さすがは我が好敵手(とも)だ。楽しい、楽しいぞ。だがな、おれのスマッシュは百八式まであるぞおおお」

 厨二病キャラを悪化させた金田は暴走していた。

 おれは、天を仰いで一息つく。ここが正念場だ。


 サービスは金田だ。あいつの手から、ボールが離れる。

「おれは人間を辞めるぞー、山田っー」

 まったくブレブレなキャラである。さっきまでの、王子様マンガはどこにいったんだ。

 おれは金田のサービスをフルスイングのレシーブで返球する。好返球となった。

「いい球だ。だが、ここは金田ゾーン」

 第一セットの最後と同じ展開だった。金田は、おれの玉の勢いを利用してカウンターを打ち込む。ここまでか……。恐ろしい速さのボールを見て諦めかけたおれだが……。


 ふと、心に浮かんだのは、さっき話した佐藤さんの笑顔だった。

「でも、かっこよかったよ。今日だけは、金田くんじゃなくて、きみを応援してる」

 さきほど、話してくれた言葉を思い出す。


「好きなひとが応援してくれているのに、負けるわけにはいかねえだろうがよ」

 そう思うとすべてがスローモーションのようになる。金田の返球が届く場所に移動して、ラケットを迎撃する準備をする。そして、もう一度、金田ゾーンへと強打を撃ち込んだ。

 金田は呆然として、反応ができなかった。


「まさか、これが……」

 金田はあっけにとられた様子だった。さきほどまでの厨二病のキャラはもうどこかに消えていた。

「無我の境地」

 いや、まったく消えていなかったようだ。おれの心境を勝手にマンガネタに昇華していた。

 マンガネタにはマンガネタで返す。


「感謝するぜ、おまえと出会えた、これまでのすべてに……」

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