スポーツ大会⑦
第一セットが終わると、三分間のインターバルがある。おれは用意された椅子に座って、気分を落ち着かせようとしていた。スポーツドリンクを飲む。深呼吸をする。金田に勝って、優勝するイメージを妄想する。
だが、
落ち着くわけがなかった。
おれが自信満々の強打を、やつは易々とネタ付きで返球してきた。そのせいで、おれの心は粉々だった。自信が揺らいでいく。この三分間で、簡単に回復なんてできるわけがない。
-絶望-
景色がセピア色に見えた。もう、終わるのかもしれない。あきらめが心の中を支配する。おれが、金田に勝つなんて無理だったのかもしれないな。そう思った時、
「山田くん、すごかったね」
聞きなれた声が、おれに話しかけてきた。
「佐藤さん……」
彼女がそこにいた。
「惜しかったね、第一セット」
「うん」
「でも、かっこよかったよ。今日だけは、金田くんじゃなくて、きみを応援してる」
彼女はいたずらっ子のような笑顔で微笑んでいた。
始まりの合図が鳴り響いた。
「じゃあ、がんばってね」
「うん、ありがとう」
短い会話だった。でも、おれにとっては最高の時間だった。世界は色づいておれを待っている。
さて、第二セットをはじめるとしよう。
おれは意気込みを強めて、台へと向かった。




