スポーツ大会⑥
こうして、第一セットは十対九という大激戦となった。金田のセットポイントに王手がかけられた。ここでおれがミスをすれば、金田が第一セットを先勝する。負けたくない。
サービスは金田。心臓が高鳴る。腕と足が震えていた。
「くく、さすがは我が好敵手だ。いい腕をしておる」
金田は厨二病患者のような、高笑いとともにおれに話しかけてきた。激戦のプレッシャーで、どうやら変なテンションになっているらしい。
「さあ、悠久の演舞を一緒に舞おうではないか? 若き挑戦者よ」
などと訳のわからない供述をしており……
もはや、なにも言うまい。一体、どこの大魔王になってしまったんだろうか。
「いくぞ、山田」
そう言いながら、金田はしゃがみ込みながらサーブを放った。ボールが不自然なまでに、左に曲がる。今まで隠していた必殺のサーブだ。あいつが、これを練習でつかっていたのをみたことはなかった。
だが、
これは動画サイトで勉強したところだった。左に曲がるサービスの対処法はばっちりだった。ラケットの角度を調整しながら、相手の回転を抑え込む。抑え込みながら、金田のいない方向にレシーブを返した。完璧だ。すべて、計・画・通・り。笑うな、まだ堪えるんだ。
おれは同点を確信した。ボールは金田の脇を超えていく。超えて……。
超えていかなかった。いつもの金田が見たことがない反射神経をみせて、球に追いつく。そして、おれのレシーブをカウンターでおれの台に沈めた。
一切、反応ができなかった……。金田が第一セットを先勝した。呆然としていたおれを「やったー」という蒼井さんの歓声が現実に引き戻した。
「甘いな、山田。おまえの狙いはお見通しだぜ。おまえが返したゾーンは、いわば“金田ゾーン”。ここは突破できんぜよ」
金田はどや顔でそう言った……。どうして、坂本龍馬みたいな口調になっているんだろうな、あいつ。




