スポーツ大会⑤
そして、スポーツ大会が始まった……。
金田と相田とおれで組んだ団体戦は、爽快だった。三人とも一ゲームも落とさず、ストレートで完勝した。圧勝だった。そもそも、練習量がほかのクラスと違っているのだ。負けるわけにはいかない。
そして、ついに始まった個人戦。ここからが本番だった。おれの目標は打倒、リア充オタク。昨日の団体戦の結果を踏まえて、トーナメント表が作られる。おれは、第二シードとなった。もちろん、金田は第一シードだ。あいつとは決勝でしか当たらない。三回勝てば、決勝だ。勝つしかない。勝ち続けなければ、復讐できない。完全な逆恨みだが……。
ちなみに、相田は個人戦には出ないらしい。理由を聞いたら……
「悪い。二日目は彼女とデートするんだ」
あのリア充がっ。おれはますます勝利に餓えた獣のようになった。
一回戦の試合がはじまった。
試合相手は完全にエンジョイ勢だった。
「やってやるぜ、うぇい」
とか言っていたのに、緩いサービスを強打で返すと、完全に戦意を喪失。相手はなすすべもなく、負けていった。
そして、むかえた決勝戦。そして、物語ははじまりに戻るのだった。
「やっぱり、決勝の相手はおまえだったか。山田」
金田はそう言いながらニヤリとした。
「さあ、白黒はっきりつけようぜ、金田」
このリア充だけには負けるわけがいかない。おれはこころの中で、そう思い自分のパトスに火をつける。
金田のサービスで、試合が始まった。白球が、ふたりの陣地を往復する。おれのミスで緩い返球になってしまった。金田はチャンスとばかりに、スマッシュを繰り出した。
「すごい」
蒼井さんが黄色い声援を送っている。クラスのみんなも応援に駆けつけてくれている。金田もおれも同じクラスだから、二人とも応援すると意気込んでいた。
「まだ、まだだね」
金田はどや顔で、そう言った。
「おまえは、テーブルテニスの王子様かっ!?」
おれは次のレシーブで、復讐を誓うのだった……。
決勝戦は、十一点マッチの二セット先取。たかが、先制点を取られただけだ。メインカメラをやられなければどうということはない。こんな場所でも、アニメの名言がでてくるあたり、おれはあいつに相当影響をうけているな。いろんなものが混ざっているが……。そう思うと、緊張感はどこかにいってしまった。
金田のサービスを、際どいコースに返球した。やつは返すのが精一杯だ。
緩くなった返球を、あいつのコートに叩きつける。おれの怒りをコートに叩きつける。
これは唯一無二の一球なり。
ボールはあいつの横を高速で通り抜けた。
「これで同点だな」
さっきの仕返しとばかりにおれはやつを煽る。




