スポーツ大会②
「この学校の一番になりたいの、スポーツ大会でおれh、ぐへえ」
大声で叫んでいた金田に、おれは全力で突っ込む。
「廊下で大声出すな。少しは擬態しろし、このリア充オタク」
「まったく、容赦ねえな、山田は。せっかくあんな面白い卓球マンガ貸してやったのに。影響されないのかよ」
「いや、たしかにおもしろかったよ。特に、決勝戦とか最高に盛り上がったし……」
おれは金田の熱にうなされて、本音をぽつりと漏らしてしまった。
「だろう。おれはチャンピオンと戦う準決勝派だけど、決勝もいいよな。あのメガネの親友がさ……」
金田に油を注入してしまった。このままではいつものマシンガントークが始まってしまう。まわりの目線が痛い。
「山田、一応言っておくけどな。おまえがやっていたテニスとは違って、卓球では急にダブルスが、三対一になったり、ネットが摩擦で燃えたりはしないからな」
「当たり前だ。どこのプリンス様だよ」
あれはフィクションであり、実在の人物や団体、競技などとは関係ありません。
おれは、テーブルテニヌをやるつもりは一切ない。
「とりあえず、今日の放課後練習しようぜ。親父の会社と付き合いがある卓球場を安く借りられることになっているからな」
こいつの俺TUEEEE状態はなんなんだろうか。おまえ、人生何週目だよ。どんな、徳を積めば、おまえに転生できるんだよ……。おれの心が暗黒面に呑まれようとしていた。個人戦はこいつだけには負けられない。そう決心したおれだった。モブにはモブの意地があるんだ。打倒、ラノベ主人公。
そして、放課後。おれと金田は合流して、卓球場に向かった。中学時代に元卓球部だったクラスメイトの相田も一緒だった。どうやら、金田がお願いしてコーチになってくれたようだ。あいつの人脈本当に半端ねえな。
相田から、基本的なラケットの持ち方を教わる。テニスとは少し違って、慣れないが回転のかけ方などは似ているのでやりやすそうだ。
金田とおれは、そこから二時間で基本的な打ち方を徹底的に教え込まれた。回転のかけ方、攻撃のやりかた、レシーブの方法、強打の返し方……。金田はすでに一か月練習しているので、それなりにマスターしていた。おれも少しずつテニスの知識を応用しておぼえていく。
「ふたりとも、初心者のくせに、うまくなるの早いわ」
相田からそう褒められておれたちは調子に乗っていった。相田も教員志望というだけあって、教え方がとてもうまい。
「スマッシュのやり方は、緩い球がきたら、相手のコートにたたきつける感じだ」とか「台との距離を考えて、フォームをコンパクトにしたり大きくしたりしろ」などとても勉強になる。
そうこうしているうちに、おれと金田は練習試合をすることになった。




