スポーツ大会①
おれたちがこうなった発端は、テスト明けのカフェだった。蒼井さんがこう言ったのだ。
「そういえば、もうすぐスポーツ大会だね。ふたりはどの種目に出るの?」
この短い疑問が、おれたちの闘争本能を騒がせることになるとは思いもしなかったのだ。そう、このときは……。
「うーん、まだ決めてなかったな」
「えー、もうスポーツ大会まで、あと一か月だよ……。早く決めないと、人気あるスポーツは定員で締め切られちゃうよ」
そういえば、去年も決めるのが遅すぎて、やりたかったテニスの部に出られなかったのだ……。おかげで、不得意なサッカーの数合わせに呼ばれてしまい結果は……。
「自分たちのサッカーができなかった」とだけ言っておこう。おかげで、異性にアピールもできずに、今に至るわけである。あそこで、選択肢を間違えたのか。
「山田はもう決めてるか?」
「うーん、まだだわ」
今年はテニスが競技種目から外れてしまったらしい。大人数参加すると、運営に時間がかかるという大人の理由で……。はじめから、わかれよ。
「なら、おれは<卓球>にでようかな?」
金田はそう言った。
「卓球? 意外だね??」
蒼井さんがそうつぶやく。たしかに、金田と卓球はあんまり縁がないように思えた。
「じつは、この前、卓球アニメにはまってな。ここ一か月練習してたんだぜ」
相変わらずの行動力に驚く。
たしか、去年の夏休みは、昔、流行ったバスケマンガ読み直して、「バスケがしたいです、山田先生」などど供述していた。本当にわけがわからない男である。そして、なによりうらやましいのは、こう見えて運動神経がいい金田は一か月くらい練習すると、それなりの腕になってしまう。すぐに、飽きてしまうのが問題だが……。
「なら、おれも卓球にしようかな。中学の時やっていたテニスに似てるし」
すこしだけ、金田に対抗心が生まれていたおれも参加を決意する。
「いいじゃん。それなら、もうひとり誘って団体戦にもでようぜ」
とんとん拍子に話が決まっていく。
「わたしも、応援するねー」
蒼井さんがそう言ってこの日はお開きになった。
次の日の放課後……。
「おう、山田。おまえの分まで、卓球に申し込んでおいたからな」
金田はいつものようにルンルンでそう言ってきた。
「ありがとうよ」
「あと、これが参考書だから」
そう言って、紙袋をおれに差し出す。かなり、重かった。
「なんだよ、これ」
袋の中身を、確認する。大判コミックが、五冊ほど詰まっていた。
「それ、明日までに読んでおいてな。それじゃあな」
金田は颯爽と帰っていく。
「まじかよ……」
おれの卓球ライフが始まった。




