テストの後に……
「それじゃあ、テスト返すぞ」
英語の担当教員がそう高らかに宣言し、生徒たちは「えー」とお決まりの文句を言う。ここまでが、学校生活の様式美だ。おれも、その定跡をなぞる。テスト期間に衝撃事実が判明したが、おれは逆に勉強に専念することができた。勉強すれば邪念はどこかに消え去ってしまう。ただ、ひたすら問題を解くことに集中した。もう、それしかなかった。
「山田、すごいな」
テストを渡されるとき、先生がそう言った。テストの点数を見る。また、百点だ。これで四教科連続の満点だった。どうやら、定期テストの歴代最高点を超えそうな勢いらしい。教員間では、おれが新記録を打ち立てるかどうか予想するのが流行っているらしい。いいのか、聖職者たち……。
「山田、どうだった」
金田がひそひそと話しかけてくる。
「まただ」
おれは嫌味にならないように、短く答えた。
「すげえな。ヤック・デカルチャー。いつも上位にいたけど、今回は完全に覚醒したんじゃないか?なにかあったのか?」
おまえがあまりにモテすぎて、嫉妬しているなんて言えるか……。バカ。
そんなツンデレのような言葉をかみ殺して、おれは曖昧にごまかした。
「金田はどうだったんだよ?」
「おれは……」
「見せろよ」
無理やり、あいつのテストを強奪する。これなんて、青春映画?
あいつのテストは、可もなく不可もなかった。
「なんだよ、これ微妙すぎて反応に困る」
「自分たちの勉強ができなかった……」
「どこの代表だよ……」
金田への嫉妬をエネルギーに変えて、今回のテストは大成功だった。
「そうだ。今日、イズミと遊びに行くからおまえも一緒に来いよ」
この鈍感ラノベ主人公がっ。
この鈍感ラノベ主人公がっ。大事なことだから二回言います。
「おれは、遠慮しておくよ。後が怖いから」
そんなパインサラダのようなわかりやすい死亡フラグにのるわけにはいかないのだ。
「えっ、なんだって??」
この鈍感ラノベ(以下略)。
そして、今おれは金田たちと、駅前のカフェにいるのだった。断わりきれなかった自分が憎い。
「じゃあ、いただきまーす」
蒼井さんが元気よく、パンケーキを食べ始める。この前のお詫びとして、おれと金田が奢ることになっていたパンケーキだ。
「くそう、貴重な昼ご飯代が……」
「泣くな、山田」
金田は硬派な男のような声でそう言った。
「って、ほとんどおまえのせいじゃん……」
「あれれ~おかしいね~」
この自覚無しリア充男子め……。滅せよ。
「そういえば、もうすぐスポーツ大会だね。ふたりはどの種目に出るの?」
「「えっ」」
リア充の歴史がまた一ページ。




