表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金持ち彼氏と貧乏彼氏  作者: D@2年連続カクヨムコン受賞
第四話 激闘!中間テスト
28/96

テスト期間③

「佐藤さんが前に言っていた好きなひとって、もしかして……。金田?」

 彼女は微笑していた。少しずつ雨が降ってくる。

 小雨をものともしないで、彼女は微笑んでいる。顔の赤みが少しずつ深くなる。

 そして、彼女の首は少しだけ縦に動いた。「うん」とおれの質問に答えるために。


「やっぱり、ばれちゃったか……。嘘つくの下手でしょう?」

 彼女はいたずらっ子のような笑顔だった。

「うん、ばればれだったよ」

 だって、彼女は金田の話題になると、いつも以上に笑顔になるし。その笑顔がとてもかわいかったし。おれとよく話していたのも、金田のことをもっとよく知るためだったのだろう。たぶん、そうだ。前に言っていたライバルというのは、蒼井さんのことだったのだろう。たしかに、強すぎるライバルだ。だって、彼女は、親友のおれ以上に金田のことを知っている。普通に考えれば、勝てるはずはない。


 少し前のおれはなんて恥ずかしい勘違いをしていたんだろうか。


「やっぱり、ばかなことしているよね。わたし」

 彼女は、少しだけ自己嫌悪のようなものが含んだ口調でそうつぶやいた。

「ライバルのこと?」

「うん。我ながら、酷い負け戦をしようとしていると思ってるよ」

「あきらめないの?」

「山田くんが、わたしだったら諦めることできる?」

「……」

 おれにとっては、少しだけ残酷な質問だった。胸がチクリと痛くなる。

「でしょ。バレバレかもしれないれど、ふたりにはまだバレてないと思うんだ。お願いだから、内緒にしておいてね」

 ふたりは無言で駅に到着した。


「じゃあ、送ってくれてありがとうね。また、学校で」

「遅いから、気をつけてな」

「うん、山田くんも」

 そう言って、彼女は雑踏のなかに消えていく。

 おれはひとり残された。


 一カ月前の言葉を思いだす。

「デモ、ゴメンナサイ。アナタハトモダチニシカミエナインデス」


 小雨が降る空の暗闇にむかって、おれは呟いた。

「どうして、あいつは主人公になれて、おれはなれないんだろうな?」

 夜空はなにも答えてくれなかった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ