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金持ち彼氏と貧乏彼氏  作者: D@2年連続カクヨムコン受賞
第四話 激闘!中間テスト
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テスト期間②

「佐藤、さん?」

 おれは、片思い相手と図書館で今月二度目となる偶然の遭遇をはたした。

「今日は勉強していたんだね。この前は携帯小説だったけど」

 彼女は手を振りながら、微笑を浮かべる。ああ、かわいい。どうして、振られたばかりなのに、彼女の笑顔はこんなに輝いて見えるんだろうか? 神さまがいるなら、聞いてみたい。殺伐としたスレに佐藤さんが!!! 兄貴に影響されて、危うくネットスラングが飛び出しかけた。危ない、危ない。


「あれは忘れてください」

「えー、なかなか忘れられないよ。同級生が図書館で『恋の空』を読んで、涙ぐんでいたところなんて」

 ベッドがあればゴロゴロしたい。穴があったら入りたい。そんな心境だ。つまり、終わった。

「いつからいたの?」

「う~んと、一時間前くらいかな。っていうか、この会話デジャブだね」

「たしかに」

 彼女はクスッとした。つられておれも顔がほころぶ。


「もう、終わりにするの?」

「うん、夕食作らないといけないから、帰るつもり」

「えーすごいね。自分で作るんだ! ならわたしも帰るから、途中まで一緒に帰ろうか?」

 これなんてギャルゲー? 佐藤さん、あんまり希望を持たせないでください。あなたの前にいる男子生徒は、あなたが一度振った相手ですよ? 男子なんてすぐに勘違いしちゃうんですからね。それをわかるんだよ。

「はい、よろこんで!!」

 思わず、ブラック企業のような返事をしてしまうおれだった。


 ふたりで、駅まで一緒に帰る。わずか、十数分の道のりだ。

「すごい集中していたね。さすがは学年トップ」

「そんなにすごかった?」

「なんか、一心不乱という四文字熟語が世界で一番似合っていたよ」

 それは褒められているんだろうか? よくわからない。

「テスト嫌だね」

「なにそれ~嫌味?」

 彼女は、少しからかうようにそう言った。

「勉強は嫌いじゃないけど、テストは嫌いなんだよ」

 あの独特の緊張感が嫌だった。こんなつまらないことに、人生をかけるおれが少し馬鹿らしかった。

「まあ、わからないでもないかも」


「そういえば、ゴールデンウイークに金田くんとふたりっきりで旅行に行ったんだって?」

「どうして、それを……」

 おれは、あの思い出で悶絶する。

「あんなに大声出してたら聞こえるでしょ」

「ですよねー」

「まあ、私のクラスにはさすがに聞こえなかったけどね。すごい話題にはなっていたよ」

 黒歴史がドンドン拡散されていく。そんなおれとは違って、彼女はどことなくうれし気だ。そして、おれはひとつの結論に達した。


 少しずつ駅が見えてくる。永遠に続いてい欲しい道のりだった。

「なんなら、家まで送るよ。暗いし」

「えっ? 大丈夫だよ。ここから近いし……」

 彼女は少し動揺しながら、おれの提案を断った。動揺するほど嫌なのかな……。少しだけ落ち込みそうだ。

 気を取り直して、おれは聞かなくてはいけないことを聞こうと思い立つ。それが自分の首を絞めるかもしれなくても……。


「違っていたら、ごめん。ひとつだけ聞きたいんだけど……」

「なに?」

「佐藤さんが前に言っていた好きなひとって、もしかして……」

 彼女の顔は少しだけ赤みがかっている。

「金田?」

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