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金持ち彼氏と貧乏彼氏  作者: D@2年連続カクヨムコン受賞
第四話 激闘!中間テスト
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学校③

 蒼井さんのただならぬ気配におれは戦慄する。これは金田に借りて観た昔のアニメを思いだすような殺気だった。まさにヤンデレヒロイン。「逃げよう」とおれは動物的本能からそう決断した。

「ああ、蒼井さん……。久しぶり。金田なら教室にいるから、おれはここで」

 そう言いつつ階段にダッシュする。よし、もうすぐこの修羅場から逃げられる。もっと早く。もっと早く。おれのそんな淡い希望は簡単に打ち砕かれた。蒼井さんの細い腕がおれの肩をつかむ。そんなに力はいれていなかったはずなのに、鉛のような重さをもっているかのようにおれは感じた。

「知らなかった? 大魔王からは逃げられないんだよ……」


「ねぇ、山田くん、どうして逃げるの?」

 絶対零度をまとった言葉がおれに襲いかかる。「あっ、これは死んだ」とおれが直感するほどの怒気が籠っていた。

「逃げてないよ。ただ、帰って勉強しないといけないだけだから……」

「嘘だツ」

 ごめん、みんな。もう逃げられそうもない。

 そして、ズルズルと教室の中へ連れていかれるおれ。これが、後に語られる血の月曜日事件である。


「さて、ふたりとも、どうしてわたしが怒っているかわかっている?」

「「大変申し訳ございませんでした」」

 なんの言い訳もしなかった。ここで選択肢を間違えたら、即座に「学校の日」と同じにことになる。明日、教室で「nice boat.」の惨劇を起こすわけにはいかないのだ。だから、あえて選ばない選択肢をとり続ける。

「ヒントは、ゴールデンウイーク、吊り橋、カップル……」

 おっと、ふたりで顔を見合わせる。おれはひそひそ声で金田に話しかけた。それは最悪の可能性だった。


「おい、金田。この前の日帰り旅行。もしかして……」

「ごめん、イズミのこと誘い忘れた」

「おいっ」

「だって、男と行ったほうが、いいネタになると思ったんだもん」

「違うだろう、このバカ―」


「さあ、懺悔の時間だよ。ふたりとも、最後に言い残すことはない?」

 辞世の句を考える。「面白きこともなき世をおもしろく」「難波のことも夢のまた夢」。偉人達もこんな気持ちだったんだろうな。そして、おれたちは終わりの時間を宣告される。

「はい、時間切れ」

 蒼井さんが少しずつ近づいてくる。おれたちの悲鳴が教室にこだました……。

 ヤンデレの歴史がまた一ページ。

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