日帰り旅行①
図書館から帰ってきたおれは、疲れ果てて眠りに落ちた。もう、いろいろと恥ずか死ぬ状況だったから疲れたのだ。
そして、不吉なアラームで、たたき起こされたのだった。このアラームということは、主はあいつ……。
窓から見える景色は、真っ暗になった街だった。
「誰だよ、せっかくのゴールデンウイークの昼寝時間を邪魔する奴は」
そんな奴はひとりしか知らないんだけどね。
スマホの着信通知は金田の名前だった。
「おう、山田。なにしてた?」
「寝てた」
「だから、電話しても出なかったのか」
「なんだ?」
「明日、朝七時に駅前集合な。オーバー」
「ワッツ?!」
「ツーツー」
有無を言わせず、おれは金田と約束させられた。拒否権もへったくれもない通話だった。
こんな誘いはいかなくてもいいのにな……。
そう言いつつ、明日が楽しみになるおれがいた。連休中に予定が入ったことが、予想以上に嬉しかった。たとえ、一緒に行くのが金田であったもな。ただ、そう思うと、少しだけ心配にもなる。
次の日の朝。
おれは駅前にいた。天気は晴朗。
せっかくの連休なのに、六時起きだった。
「おーい山田。こっちだ、こっち」
朝早くから元気なやつだ。
「なんだよ、金田。こんな朝早くに」
どうせ、アニメ関係のイベント行くから付き合ってとかだろうけどな。
「おう、ほいこれ」
いきなり、切符を渡された。なんだか、県外の地名が書かれている。
「行くぞ、トールンキャッスル!」
「おい、どこだよ、それ」
「なんだ、ドイツ語のほうが好きか。行くぞ、ローゼンブルク」
ローゼンブルク? 茨の城? それって、隣の隣の県じゃないのか?
目的地もよくわからず、おれたちの日帰り旅行が始まった。




