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金持ち彼氏と貧乏彼氏  作者: D@2年連続カクヨムコン受賞
第三話 ゴールデンウィーク
18/96

図書館にて

 世はまさにゴールデンウィーク。

 学校や仕事は休みだ。兄貴は、ひたすら寝ると言って、部屋から出てこない。食事もそこそこに、起きたら起きたで部屋に籠って、「タンタン、アニメ三昧」するらしい。


 おれはどこかにいく予定もないので、図書館でもいって時間を潰そう。いつもの過ごし方だった。そう思って、外に出た。街にひとは少ない。みんな里帰りでどこかに帰ってしまったのだろうか。実家がこの街のおれにはピンと来ない話だ。たまには、両親の墓参りにでもいかないとな。


「この前の告白がうまくいっていたら、楽しい連休だったのかな……」

 ふと、そんな気持ちになってしまう。ありえたかもしれないもうひとつの世界を夢想してしまう。

 やめろ、考えるな。感じるな。このままでは、リア充の暗黒面に呑まれてしまう。


「天気イイナ」

 なんだよ、それ。自分で言っていて、ツッコんでしまう。そんなんじゃ、暗黒面に勝てるわけねぇだろう。

 そんな独り言で、気が紛れるわけがなく、逆にドンドン落ち込んでしまうルートだった。そんなことを考えていると目的の図書館に着いてしまった。


 図書館はいい。何がいいって、本が無料で読めるのだ。そんなにお金に余裕がなくても、暇をつぶせる最高の場所だ。

 いつもは勉強するんだが、今日はそんな気分になれなかった。適当におもしろそうな小説を見繕って、テーブル席に座って読みはじめる。十年くらい前に出版された恋愛を主題にしたベストセラーだ。純愛もの。同級生に見られたら死ねる。そう確信しながら、スリルも楽しむ。


 連休中だけあって、人も少ないので図書館は自分だけの世界だ。


 それから二時間後。おれは夢中になって、本を読み終わった。

「うー」といいながら、体を伸ばす。集中して、読んでいたので、肩が凝ってしまった。そろそろ、正午だから家にでも帰るかと思ったその時、

「読み終わったの?山田くん?」

 ひょんなところから、見知った声が聞こえた。

 そう、つい一か月前に失恋し、一週間前にエレベーターに一緒に閉じ込められた女の子の声だった。


「佐藤さん……」

 彼女は、俺の前の席で勉強をしていた。

「ごめんね。集中していたみたいだから、声かけにくくて」

「全然、気がつかなかったよ。いつから」

「一時間前くらいかな?」

「そんなに前から」

 そして、おれは読んでいた本のタイトルに気がつく。これはまずい。


「それにしても意外だったな。山田くんってそういう小説が好きなんだね。なんというか、乙女チックだね」

 おれと佐藤さんの間には『恋の空』というネット恋愛小説が置かれていた。

 

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