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金持ち彼氏と貧乏彼氏  作者: D@2年連続カクヨムコン受賞
第三話 ゴールデンウィーク
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ゴールデンウィーク前夜

 ついに明日からはゴールデンウィークだ。


 まだ、高校二年がはじまって、ひと月しか経っていないのだけれど、色々なことがあった。いや、ありすぎた。

 告白(玉砕)、失恋、失恋相手と密室に閉じ込められるなどなど。まあ、それについては、ほとんど黒歴史しかない件については……。とりあえず、おいておこう。これ以上考えてはいけない。暗黒面に取り込まれる。


 明日からは連休だ。連休パワーで、今の嫌な流れを断ち切るのだ。

 そして、おれはスマホの予定を眺める。

 眺める。

 眺める。


 そう、答えは……。

「真っ白」だった。

 こんなんでいいのか、おれの青春。高校二年の貴重な連休なのに。

 絶望に沈みながら、おれは台所に向かった。


 そろそろ、親代わりの兄貴が帰ってくる時間なのだ。もやしとキャベツを味噌で炒めるだけの簡単な男料理だ。兄貴の給料日まで、あと数週間ある。しばらくは、節約だ。ふたりぐらしになってから、おれは家事のほとんどをこなしていた。


「ただいま~」

 ドアを開ける音がする。兄貴が帰ってきた。

「おかえり。今日は早かったな」

「連休前で、仕事なんかしたくないからな」

 ネクタイは嫌いだと言って、兄貴は投げ捨てた。不良青年状態の兄貴が、ソファーでぐったりする。

「飲み会とかなかったのか?」

「今の課はそんなに体育会系じゃねぇんだよ」

「今日のめしはなに?」

「もやしとキャベツの炒め物、サバ缶」

 兄貴は不思議な顔をする。なんだ、その売れ残りのクリスマスケーキを見るような眼は。まあ、メニューについてはお察しなんだけどね。


「今日のめしはなに?」

 おかしいな、世界線でも変わったのかな。この既視感。

「あきらめろ。これは現実だ」

「これが世界の選択か」

「ビールがあれば、なんでもいいんだろ」

 これが数年間で学んだ魔法の言葉だ。

「まあな」

 いつもの夕食がはじまった。


「最近、高校はどうだ」

「まぁ、ボチボチ」

「ところで、この前の告白はどうなった?」

「ごほお」

 キャベツが喉につまるかと思った。この話は兄貴には言っていないのに……。

「どうして、それを」

「金田君から聞いた」

「あのやろおおおおおお」


 兄貴と金田は仲がいい。去年、遊びにきたときにお互いの趣味で、意気投合し、おれが間に入らないで連絡を勝手に取り合っているようだ。

「で、どうだった、どうだった?」

「絶対、結果知ってるだろ」

「もちろん」

「兄貴いいいいい」

「弟くん大敗北。ねぇ、今どんな気持ち。ねぇ、ねぇねぇ」

 見事な煽りっぷりだった。さすがは現役のねらーだ。まぁ、幼い時からいじめられていたおれは、最強のスルースキルを持っている。これは無視だ、無視しかない。抑えるんだ、おれの右腕。まだだ、腹パンにはまだ早い。


「まぁ、冗談はこれくらいにして」

「かなり、本気だったろ」

「古典でもよく言うだろ。負けたことがあるというのが……」

「それはオタクの古典だから」


 兄貴はきゅうに真面目な顔になった。

「若いうちに、いっぱい失敗しろよ」

 自分だってまだ若いくせに……

「おう」

 そう答えるのが精一杯だった。

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