カフェにて
「ヘェーソイツハタイヘンダッタナ」
金田は機械音のような声でそう言った。いかにもわざとらしい態度だ。かなりむかつく。
おれは、金田たちと昼ご飯を食べている。
なりゆきで、佐藤さんも一緒だった。
「ねぇ、イズミ奥様。信じられますか。偶然、本屋で同級生に出会って、偶然、ふたりでエレベーターに閉じ込められるなんて」
「そんな偶然、ありえないよ。どこのラブコメ主人公だよって感じですわね」
おれたちは、こんな風に幼馴染コンビの厳しい追及を受けていた。かなり厳しい追及だ。
もうカフェに入ってから十五分はこんな感じだった。
「じつは、ふたりとも付き合ってるんじゃないの?」
蒼井さんは死んだ魚の目でそう言う。抜け駆けずるいという非難の目だ。
「「違います」」
「息ピッタリだし」
金田も同調した。
「「だから」」
おれたちは、火に油を注いだ。
「第三者の厳しい目でみると、限りなくアウトに近いアウトですね」
蒼井さんはそう断じた。もう目は生き返っていた。完全にアウトです。本当にありがとうございます。
「わかったよ。ここの代金奢るから、許して」
おれは全面降伏した。おれには、腹案があった。
「そんなこと言って、どうせさっきもらった商品券使うんだろ」
あっ、腹案が簡単につぶれた。今日の金田はいつになく鋭かった。デパートの店員さんから、お詫びにもらった商品券を目撃されていたらしい。
「じゃあ、金田だけ、自腹な」
一矢報いようとするおれ。
「大変申し訳ございませんでした」
「美味しかったな、あそこ」
「うん、デザートのケーキも最高」
「わたしまで、ありがとうね。チョコももらったのに」
三者三様の感想だ。
「「「ごちそうさまでした」」」
みんなホクホクしている。おれを除いては……。
「なあ、おかしいぞ。金田。もらった商品券が全部レジに消えたんだ」
「ナニソレコワイ」
「おまえたち、頼みすぎだあああああああああああああああ」
日替わりランチにケーキにドリンクとフルセットを注文されたおれの財布から、商品券はすべて蒸発した。危うくF〇で有り金全部溶かした顔の人になるところだ。
「まあ、まあ。たまにはいいじゃない」
「そうそう、おれにいつも奢らせてるじゃん。イズミからも毎回ケーキもらってるし」
「まぁ、そりゃあ、そうだけどさ。でもさ~」
「男気あってかっこいいよ」
「んだんだ」
幼馴染コンビの棒読みで、ウヤムヤになってしまった。
自然に笑いが起きた。
「本当にありがとうね。三人とも本当に仲いいんだね。少しうらやましいな」
佐藤さんは笑いながらそう言った。
「また、一緒に遊んでね」
「「「もちろん」」」
「じゃあ、デートを邪魔しちゃ悪いから。またね」
彼女は帰っていった。
「じゃあ、おれも。ふたりとも仲良くな」
「うん、また月曜日。学校で」
「バイバイ」
トラブル続きだけど、おれの休日はいつの間にか楽しい休日になっていた。