デパートにて①~幼馴染サイド~
朝、携帯が鳴った。起きてレシピ本を読んでいたわたしは、慌てて携帯に手を伸ばす。
もうすぐゴールデンウィークという週末の土曜日。外はとても天気が良かった。
こんな時に、連絡をくれる友達なんて、彼しか考えられなかった。朝から幸せな気分になれる。
わたしは急いで携帯を開く。ディスプレイに光がともると、彼の名前が現れた。
『おはよう。朝早くに悪いんだけど、買い物付き合ってくれないか』
やっぱり彼だった。嬉しくて、ベットでゴロゴロしてしまう。今日は最良の日だ。
だって、会えないと思っていた日に彼と遊べるのだから……。それも、ふたりきりで。
彼はいつも急に遊びに誘ってくれる。この前の勉強会もそうだった。
『いいよー。駅前に十時でいいかな??』
わたしはルンルンになって、即レスした。たぶん、アニメグッズの限定版購入とかだろう。おひとり様、一点限りのものをふたつ欲しい時の手口だ。
この前、山田くんが急に遊びに誘われた時は、エキサイトセットを注文するという罰ゲームだったらしいから、それに比べたらかわいいものだ。
「たのしみ、だな……」
わたしは声にならない悲鳴をあげて、再び枕にダイブした。何度もベットをゴロゴロ往復する。
わたしはリビングに降りていく。
「おはよう。お母さん。ちょっと遊びに行ってくるね」
「どうしたの。イズミ。そんなに慌てて。だれと遊びに行くの?」
お母さんは笑っていた。たぶん、だれと遊びに行くかはもうわかっている。それはそうだ。何年、彼とわたしのことをみているんだ。
「フフフ、秘密だよ」
それでも、わたしはごまかした。少しだけ気恥ずかしさがあったから。
わたしの幸せな休日ははじまった。