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―――ようやくこちらの準備が整ったよ。明後日の朝、この街の映画館まで来なさい。そうすれば彼女と君の過去、全てを恙無く思い出せるだろう。


 数日前オッサンと交わした言葉を反芻しつつ、用を足したトイレから出る。

(胡散臭えが、殊事は彼女だ。行くしかねえ)

 何せ奴は写真を所持していたのだ。無関係とは思えない。それに、

(あの野郎相手だと、不思議と気構えせずに話せるんだよな……)

 母親風に言えば、不在の親父の投影か?いや、違う。あのオッサンからは、俺と近い匂いがするのだ―――世間から外れざるを得ない、異端の匂いが。

「ん?何でこんなに集まって……ああ、猫か」

 球場内の売店脇。応援らしき女共が群がる中心には、雑種と思しき数匹の猫が屯していた。と、会計を終えた男性店員が、彼女等に煮干しの袋を手渡す。どうやら奴が餌付けの主犯のようだ。

 残念ながら、うちでは動物を飼った事が無い。母が凡そどんな動物も毛嫌いし、道端で触れる事さえ禁じているせいだ。幾らアレルギーにしても、あの態度だけはハッキリ言って異常だ。

(あんなに可愛いのにな……ん?)

 一家のボスらしき白黒の斑が、離れている俺へ流し目を寄越した気がした。まさか、な。

 だが、暢気に己がベンチへ戻る俺は、予兆すら感じていなかった。これから向かうグラウンドが、文字通りの戦場になろうとは……。




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