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シャッ、シャッ。「―――何の用だ、こんな遅くに」「君こそ」
日付の変わりかけた深夜、『ホーム』地下実験室。家族の目を忍び、親友の遺骨を加工していた所に現れた“紫”は、黙って入って来た扉を閉めた。
「ふーん。随分剣らしい様になったじゃないか、クローディア」
研磨したばかりの刀身をコンコン。
「うん、強度も充分だ」
「それは当てつけか?親友を武器になんぞ仕立てた俺への」
未だ残る罪悪感から口にした台詞。すると予想通りジョシュアは冷笑し、後ろ手を組んでターンした。
「そう思うならまだ間に合う。今すぐ埋め直してきなよ」
「………」
「言っておくけど、僕なら絶対そんな物使わないよ。下手に想いが籠もった道具は、肝心な時に限って折れるんだ。それでも敢えて振るおうって言うなら、重々覚悟を決めておく事だね。なんて―――」
知った口を。経験でもあるの、
「―――結局、僕は羨ましいんだろうね。これから復讐に行ける君と桜が」「え?」
どう言う意味だ?
「当時は虚しかったよ、凄まじく。いっそ奴と一緒に死んでおけば良かった、そう思ってしまう位にはね」
少年の瞳に宿る、老いの混じった諦観の輝き。
「ジョシュア、お前……」
「クローディアも失われた時間も、決して帰ってきやしないんだ。それだけは覚えておきなよ、アダム。君はまだ子供だから……ただ守る事すら時に手に余るって事に、気付いてもいないだろうけど」
絞り上げるような声と共に、童顔を覆う苦悩。こいつはとうの昔に知っているのだ、私怨の行く末を。何れ俺達が見るであろう絶望の光景を。ならば、
「なあ、ジョシュア」
呼び掛けに上げられた邪眼を真正面から見据え、もし、そう告げる。
「無事アンダースン三姉妹を殺せたら―――お前のその後味悪ぃ復讐話、俺に聞かせてくれよ」「え……あんなの何の参考にもならないよ?」
半ば呆れたように呟く家族に、自然と笑みが零れた。
「ビビらせられっ放しは癪だからな。そろそろ一つ位、お前の弱みを握らせてくれてもいいだろ?」
「はー、馬鹿正直な奴……でもま、いい加減時効か。いいよ」
伸ばされた小指。タオルで付着した骨粉を拭い、忘れるなよ、俺は同じ部位でしっかりと結んだ。




