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※この話は『花十篇 カーネーション』の続篇です。

前作のネタバレが多分に含まれますので、先にそちらを御一読頂けると助かります。

また、『前十篇』シリーズはオムニバス形式の作品です。

読む目安は、赤→灰→緑・蒼・白・黄→金→イレイザー・ケース→虹・黒となります。

可能であればその順番でお読み下さい。



「―――いよいよだな」「ああ」


 宇宙歴六百七十年某日、“白の星”環紗。都市の南部郊外の野球球場のベンチにて、街自慢の高校球児達は堅い円陣を組んでいた。

「いいか、相手は瞑洛の連中だ。所詮俺達の敵じゃない」

 キャプテン兼ピッチャーの挑発的な台詞に坊主頭一同、特に右隣に立つ藍色の瞳の青年が強く首肯した。彼の様子を確認し、リーダーがニッと笑う。


「ああ。初戦だからって手抜きは無用だ、シン。他の皆も、打順が回ってきたら思いっ切りかっ飛ばしてやれ!」「「「おー!!!」」」


 裂帛の気合と共に円陣を解く、チーム環紗高校。各々ベンチで準備に入る中、キャプテンは十番のユニフォームを着た右腕の下へ。

「シン、今日は頭痛大丈夫か?」

 ああ、バットを振って最終調整中の同級生は、気遣いに小さく頷く。

「なら良かった。お前が打てるのと打てないのとじゃ、チームの士気が全然違うからな」

「おいおい」苦笑。「ま、見ての通り調子は上々だ。一巡目でホームラン決めて、精々お前等を早めに帰らせてやるさ」

 自信満々の宣言後、シン・アンダースンは一人グラウンドへ。真上の観客席を仰ぎ見、手摺りから半身を乗り出す短髪の中年女性へ手を振る。

「シン、頑張るんだよ!」

 彼と一ミリも似ていない母親は快活に右手を上げ、掴んだ白い弁当包みを示す。

「今日はお前の好きな唐揚弁当だからね!試合が終わったら取りにおいで!!」

「分かった!ありがとう、母さん!!」

 ガッツポーズを決めたまま、意気揚々とベンチへ舞い戻る高校球児。見慣れた光景なのだろう、チームメイトは誰一人彼をからかわなかった。

 四番バッターは野球帽を被り、続いて荷物入れのリュックサックから長財布を取り出した。数枚の紙幣と共に収まる一枚の写真を眺め、軽い溜息を吐く。

(そうさ。こんなつまらない試合はとっとと終わらせて、明日のためにしっかり休んどかないと、な……) 

 雲一つ無い青空をバックに写る、プラチナヘアとアメジストの瞳を持つ少女。長年追い求める幻影の転写を愛しげに見やりながら、球児は入手の経緯を回想し始めた。




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