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エルフ騎士とモブプリースト  作者: ヨシュア
2/3

聖騎士との対面

 闇の中での浮遊感は一瞬だった。

 すぐさま視界が晴れるとあたり一面燃え上がる街の中であった。

 空気が熱い。

 逃げ惑う街人たちの悲鳴や、炎の中を突き進むゴーレムたちの音と振動が耳に入ってくる。

「ダークくん、どうする?」

「逃げようか?」

 剣を抜いて鋭い視線を向けるシルヴィアに答える。

「同意。自分たちの置かれている状況がまったく把握できないから仕方ないわね。

 あのゴーレムは見たことないなぁ、大きすぎない?」

 10メートルほどの石で出来ていそうなゴーレムが数体街を破壊している。

 ただ街が襲われているのはゴーレムだけではないようだ。

 走って燃える街の中を駆ける中、モンスターに出会う。

 街人に切りかかっている骸骨のアンデッドたちがたむろしていた。

「【聖なる領域(サンクチュアリ)】!」

 力ある言葉と共に脳内であのあたり、とイメージした大地に十字架の光が召喚される。

 人は癒し、亡者は浄化させる回復魔法だ。

 討ち漏れたアンデッドをシルヴィアがこれも魔法で討ちとっていく。

「ダークくん、音がするわ。斬撃の音が聞こえる。こっち」

「エルフになって耳が良くなったのかな?」

「かもしれないわね。むしろ私たち、元の体のステータスを反映されたらこんなに早く走れるわけないじゃない?」

「そうだね…確実にヘバってるよね…」

「私はともかくダークくんは確実に」

 もやしですまんかった。

 運動不足な元の身体は置いといて、俺たちは広間に出たようだ。

 そこで俺たちは思わず足を止めて口をあんぐりと開いてその光景を見るしかなかった。

 斬撃は街の衛兵風の騎士たちが一人の騎士に向かって切りかかっていたものだ。

 その騎士は黄金の鎧を身にまとい、長い黄金の髪は煌めいて―――手に持つ巨大な深紅の盾。

 そこに描かれているのは黒い十字架に茨と蛇が巻き咲く一輪の赤い薔薇。

 騎士の顔は目元を覆う白い仮面のせいでわからない。

 …が、俺たちは知っている。

 騎士は構える、盾を前にして剣を引いて身を屈める。

「【ローゼン・クロイツ】!!!」

 突きだされた剣先に浮かぶ十字の閃光。

 薔薇の花びらのように騎士の周りに舞うのは相手の鮮血―――

 あれって範囲攻撃だったっけ?

 じゃなくて―――

「リュミエールさま!」

 思わず名を叫んでしまう。様までつけてしまったぞ。

 若干横でシルヴィアが「うわ…」って顔したけどええやん!

 てかなんでや!なんでアイツがここにいて、勝手に動いてるねん!!!!

「―――久しいな、ダーク」

 こちらに振り返りながら澄んだ声で名を呼ばれる。

 これだ、そう、これ!かっこいい。なにこれ、これだ、俺の理想のキャラがそこにいる…。

「だが、ここでお別れだ。お前も我が王の供物となれ」

「は?お前が王だろ。何他人に仕えて―――」

「ダークくん、シールドブーメランがくる!」

「動きがまんま俺なんだけど!」

「喋り方と立ち振る舞いと考え方もね!」

「また闇堕ちしたのかリュミエール…」

 俺とシルヴィアは身を屈めながらも防御魔法を張る。

 リュミエールは大振りに盾を構え、そして

「シィィーーールド、ブゥゥーーーメランッ!!!!」

 思いっきり投げた。

 俺の大好きなスキルである。

 ト○ホークブーメランっぽくて好きなんだ、力こそパワー。

 なんてアホな現実逃避しつつも目の前で魔法の障壁と巨大な盾がぶつかり合ってものすごい硬質な音を立てながら弾かれていく。

 普段投げている側だからわからないが、結構これ怖いな。ただの物理攻撃だからよかった…。

 盾は引き寄せられるようにリュミエールの腕を収める。

 ちなみに盾で相手の顔を叩き潰すのが好きという設定もある。

 そう彼は俺が作ったキャラだ。ロールプレイ中は『改心した悪の聖騎士』としてシルヴィアの別キャラと冒険していた。

 ちなみにこの身体、ダークはそのリュミエールの付き人という設定なのだ。

 容姿端麗剣技も一級、とある亡国の王だったがいろいろあって改心し、今は聖騎士として生きている…という設定だ。

 ちなみに性格は高飛車であり常に上から目線。しかし過去から影のある一面も。そして悪オチしやすいというなんかちょっと盛りすぎちゃった感あるな。仕方ないよ高校生の時に考えたんだもん。

 というかなんで勝手に動いてるの?おかしくない?

 しかも敵対してるし。

「…貴方の主とやらは、誰なの?」

 シルヴィアが剣を構えながら問いかける。

「初めまして麗しきエルフ。」

 あ、シルヴィアの中の人はわからないんだ…。

 他ゲームのキャラだからか?うーん、この辺わからないな。

 現実世界での記憶はもっていないのかも…?

「私が仕えるのは闇の王、とだけ伝えておきましょう。王は魂を求めているのだ。

 魂を集めれば、求める世界が手に入る…そう、我が愛しき者にも会えるんだ…」

「…ダークくん、愛しき者って誰だっけ?彼の死んだ恋人のことでいいの?」

 コソコソと小声で問いかけてくるシルヴィア。

 他人のキャラ設定は忘れない人なんだけど、数年経ってるので仕方ない。

「たぶんそれでいいと思う。めっちゃ引きずってるっていう設定だから」

「しんどすぎる設定つけるのやめようよ…」

「え…かっこいいと思ったのに…」

「そっか…かっこいいなら仕方ないよね…」

 めっちゃ諭されてる気がする…。

 もしかして黒歴史…?

「…死者は戻ってこないわ。望んだ世界が手に入るなんてそんな上手い話あるわけないでしょう?」

「世界を構築する『鍵』…我が王はそれを手にしているのだ。しかしそれには魔力が足りない。

 だからこうやって街を潰し人間を駆逐しているのだ、ハハハハハハ!」

「うーん、ダークくんと演劇してるみたいな変な感じがしてやりにくいなぁ…」

「俺は見てて楽しい」

「…はぁ、まぁこのままだと殺されてしまうんだから抵抗はさせてもらうけど。殴っていいのね?」

 了解を取ってくれるシルヴィア。

「いつもリュミエール殴られてたし今更だよね」

「それもそうだったわ」

 悪役ポジションだったからね、仕方ないね。

 それを望んでいたのはこの俺なんだけど…ごめんなリュミエール!あとでヒールするから!!!

ぜんぜんまだぼうけんしてない

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