本当に勘弁してよね
拝啓ご両親様
入学三日目にして自己紹介タイムがやって来ました。
この場合何を言えば良いのですか??
廊下を全力疾走ナウ
そんなことを考えてる辺りまだ余裕なのかもしれない
チャイムがなるまでに教室に入れるか入れないか分からない状況にある筈なのに脳味噌は存外暇らしい
階段をかけ上がって目指すは廊下の奥から二番目の教室で私と百合のクラス五組
百合も並走しては居るけど、私みたいに息が上がってる素振りは一切無い。
何の運動してるかは知らないけど流石運動部
扉を勢い良く開くと全身に突き刺さる複数の視線と景気良くなり響くチャイム
騒いでいた男子生徒達は水を打った様に静かになったのはチャイムのせいかそれとも別の理由か
「お前ら席に着けーい」
妙ちくりんな静寂をぶち壊したのは我らが五組の空気読まない系担任(ここ二日で空気読まないことが発覚)佐々木先生
先生の鶴の一声で此方を見ていた男子達は席に着き始める。
「ホームルーム始める前にひとつだけやりたいことがあるー」
やけに真剣な顔で言う。
「今日始めてクラス全員揃ったから自己紹介タイムをやりたいと思う」
席順(名簿順)に前に出てきて頼むー
言いたいことだけ言うとさっさと教室の後ろに捌ける佐々木先生
名簿順となるとトップバッター私ではないか
内心舌打ちしつつ前に出る。
「桜庭美姫です、よろしくお願いします」
質問が飛んでくる前に誰も見ないように一息で言い切ると軽くお辞儀をしてそそくさと席に戻る。
入れ違いに百合が席を立ち、黒板の前に立つ。
「清水百合です
よろしく」
百合もまた私みたいにさっさと名前だけ名乗ると席に戻ってきた。
後の男子が次々と趣味や部活、特技の紹介をしていたみたいだけど、覚えていない。
最後の一人が物凄い挨拶をしでかしたから。
「僕の名前は吉田勇兎演劇部に入る予定の将来有望株です
今ならココ空いてますよ御二人とも」
自分の傍らを指差しながらとびきりの笑顔を私と百合に向けてきた。
「慎んで遠慮させて頂きます!」
「いらん!」
一年の廊下に怒号と悲鳴が混じった叫びが木霊した。