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迷う家  作者: ぴよ
2/5

タヌキもどき

「んん・・・・・・。」

試しにカーテンを閉じてもう一回開いてみた。


変わらなかった。


「なにこれっ!?」

パジャマ姿のまま外へ飛び出した。ドッキリ、なんだろうか。


苔の生えた塀と荒れ気味な家庭菜園もとい小さな畑。そりゃあ、細かい形まで覚えているわけではないけれど昨日と変わらない景色だ。振り返れば増築部分まで変わらぬ実家の姿がある。


ただ1点塀の外が樹海並みの密集した森が広がっているという事が変わっている。


最近の技術は凄いらしいし再現は不可能ではないかもしれない。でも、私相手にココまでやるか?

理由が全く見当たらない。ドッキリなら早くスタッフ来てくれ。理由も話してくれ。


願いとは裏腹に、立ち尽くすも誰も来てくれない。


ピギャーという鳥か何かの鳴き声で我に返った。

こうしていても仕方ないか。よし、まずはドッキリだという方向で進めよう。カメラがあるかもしれないのにパジャマ姿をさらしたままはよくない。


服を着替え小腹が減ったので食パンを焼いて朝食だ。インスタントコーヒーとスクランブルエッグなんて作ってみた。

焼いているときに気づいたけれどガス・電気・水道が使える。若干ドッキリ説が濃厚になってきましたね。少し安心してきた。


「どうしようかな。」

本当はご近所さんに引っ越し挨拶周りに行くはずが、近所は森になってしまった。100メートル先に民家があるかも怪しい。

他にやることといえば荷物を開けて整理することぐらい。


非常に地味な映像になるけれど番組的にダメかな?塀の周りくらいなら探索に行って見るべきか。

考えた末、塀越しに外を覗いてみることにした。敷地外にでるのはちょっと怖い。


畑のすぐ横の塀に手をかけ慎重に覗く。するとこちらにお尻をむけて地面の匂いを嗅いでいる動物がいた。あのふかふかの尻尾には見覚えがある。

(タ、タヌキだー!!)


さすが森。野生動物が見られるなんて。ちょっとくらい餌をあげてもいいだろうか。

音をたてないようにそっと家庭菜園からトマトを一つもいできて、塀の近くに落とした。

見ていたら来ないだろうと思って頭を引っ込めて待つ。


警戒するように何度も立ち止まりながら足音は近づき、ついにトマトに食いついたようだ。

(やった!)

再度覗き込むと、こちらに気づくことなくトマトにかじりつく生き物の姿が見えた。


「・・・・・・・え?」


その生き物は私の漏らした声を意に介した様子もなく食事を続けている。

「狸、じゃない?」

確認するように震える声がまるで私の声ではないみたいだ。

食事を終えた生き物が用はないと言わんばかりに悠々と去っていく姿を凍り付いたように見送った。


その生き物はほとんど狸だった。頭に子鬼のような二本角が生えた狸だった。












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