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修太郎と四人の女の子  作者: 小町寛士
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第一話

アメリカ合衆国マイアミ。


ここにのツンツン頭の日本人、修太郎は居を構えている。


マイアミのビーチとその大海原の景色は絶景の一言で、アメリカのリゾートといえばハワイが代表的ではあるが、修太郎は断然、こちらのほうがお気に入りである。



彼はセラピストでありながら、全米でセラピーについてセミナーも行っている。


今日はこのビーチで、彼女でアメリカ人のハークレスと、絶景の昼の海辺で、デート中である。



「ねぇ、修太郎、このビーチって長さ何キロ?」


「ん? ん~・・・ 考えたことねぇな」


「だめだよ~? もっといろんなことに興味持たないと、人生短く感じちゃうよ~」


彼女は、自身が大企業の社長であるということもあるのか、とにかく社訓めいたセリフ回しが特徴的だ。



「まぁ、それもそうだな~」


「なんかすっごい気怠い返事って感じ! せっかくのデートなんだからもっとしゃべってよ!」


「それも・・・そうだな。お前といるのが楽しくって、何喋ってても幸せだから、気怠くもなるさ」


「・・・!」


ハークレスの顔は真っ赤になる。普段の社長業務では皆を鼓舞する天才であるが、彼の前では色々なものが緩むらしい。それが少年にとっては少し嬉しかった。



海岸でハークレスは切り出す。


「・・・ねぇ、修太郎。そろそろ、同棲したいんだけど。もちろん私がカリフォルニアからこっちに来るからさ」


「え~・・・」


その乗り気ではないと取れる返事に、にハークレスの表情は曇る。少女は彼のことが好きだ、大好きだ。彼の人間の本質的な部分にしか興味のない感性、ふとした笑顔、全ての仕草、すべて幸せな気分にしてくれる。


でも、叶わないのか。実らないのか、数か月や数年でサヨナラなのか。



「いいよ」


「・・・っ!」


そのあっさりした回答に拍子抜けする、



「何で溜めた!? 何で溜めた!?」


「だって俺、お前のこと、好きだし」


いつも通りだけど、いつも通り過ぎる。こんな時までからかってくるなんて、ちょっと腹が立つ。でも、その百倍以上の喜びが胸中を渦巻く。


「でも嬉しい! いつから、いつから、来月来週明日今日!?」


「んなわけねーだろ! お前の都合の最速でいいよ!」


少年は苦笑しながら応える。


「じゃあソッコーで荷物まとめるね!」


笑顔ではしゃぐハークレス。それを見て苦笑する修太郎。


そのあと二人は色々なことを話し合った。部屋割りのこと、起きる時間のこと、修太郎の作るご飯のこと。二人の声はまるで鳥の囀りのように甘美な音となる。



ハークレスとばいばいして、修太郎は家路につく。とはいっても徒歩数分だが。


修太郎は嬉しかった。彼女は熱い人間だが、人の心に寄り添えるだけの度量もある。彼女といるだけで楽しい。胸もでかいし。


彼女と別れ、自宅の一軒家に戻り、ベッドに倒れこむ。


彼らしくないが、少々ウキウキしていた。彼女との暮らしが楽しみだ。彼女にご飯作ってあげたい。彼女を抱き締めたい。抱きたい。


そんなことを思いながら、いつの間にか少年は眠りについた。





                       二





翌朝、修太郎は目を覚ます。


顔を洗い、歯磨きをして、朝食を作り、摂る。そしてとある少女に電話を掛ける。


とある女性に電話を掛けた。ドイツ人のミハエルだ。そしてこう告げる。あの少女が聞けば仰天する言葉を、告げる。





「今日デートしようよ。えっ? 何でって、たまにはお前に会わないと、ちゃんとしてるかどうか分かんねぇだろ!? お前は俺がいねぇと何にも出来ねぇんだからな!」





彼の口は悪いが、修太郎は彼女に恋心を抱いていた。早く会いたい。そう思って電話した。



修太郎はプライベートジェットでロスへ飛び、ショッピングモールでミハエルと落ち合った。彼女は青髪ロングに青い瞳を持つ小柄な少女だ。


「よー! ミハエル、今日も素敵だな」


「ふふっ、ありがとう」


少年は少女の服装を見る。白いワンピースに、左腕を包むブルーの腕輪。そんな少女に可愛らしさを覚える。


「意外と・・・気合い入れてるか?」


「修太郎君が言ってた、わりと『あなたがいないと、私ダメなの』っていうのは本当だよ?」



彼女としたことは何の変哲もないデートだ。


ショッピングをして食事をして映画を見て、夜景の見える観覧車に乗った。


少女は優しい笑みと口調でゆっくり話す人で、時々おかしい冗談を言う。修太郎にとって、とても癒される存在だった。


そして少年は切り出した。それは、少年が長く願っていたことだった。





「なぁ、ミハエル、一緒に住まないか。俺の家でさ」


「・・・・」





ミハエルは無言だった。困っているのだろうか。


だがその無言は、俯いて・ではなく、ぽかんとした顔だった。


まるで、そんなことを言われるとは思ってなかったかのように。


「・・・じゃあ、一緒に・・・住む?」


「・・・え、いいの!? やったー! すげー嬉しい!」


「そんな喜ぶかなぁ。私だってあなたのこと好きなの、分かってるくせに。私も修太郎に劣らないくらい嬉しいけど」


少女は嬉しさから、顔をほころばせた。その姿に胸キュンした。


「やったー! 同棲だー!」


修太郎は嬉しくて宙を舞う。単純な人、とミハエルは思った。でもその喜ぶ姿を見るのは、悪い気がしない。


その後、少し話して二人はバイバイした。



帰りの機内でも、少年は幸せだった。いつになったら同棲しよう。いつになったら自分の邸宅に招待しよう。そんな可愛らしい願いを胸に、修太郎は眠りについた。





                       三





とある少年ががミハエルに同棲を受け入れてもらったその五日後の早朝。


占い師の大和美夏はアメリカ合衆国ユタ州ソルトレイクシティにて、修太郎からの電話を受けていた。


(修太郎くんからの・・・電話)





彼は二年前からずっと交際している彼氏である。





占い師として活躍する彼女の朝は早く、早朝にもかかわらず、恋する彼からの電話は、彼女の気分をより高揚させる。


「おっす! 美夏!」


「そんな大きな声じゃなくても聞こえるよ」


口では呆れているが、内心は嬉しい。


「なあ、話したいんだよ。とりとめもない、なんでもない話を」


「うん、いいよ」



彼のいつも通りの突き抜けた切り出しからの、いつも通りの会話。


彼の突き抜けた切り出しにはドキリとさせられるし、とりとめのない会話は少女に高揚感を与えてくれる。


会話の内容は本当にとりとめもなくて、内容がなくて、でも確かに楽しいものだった。


ともだちとのハプニング、昨日は何を食べたか、占いをしているときの珍客、そんな話をして二時間。



何がきっかけとなったわけでもない。普段通りの会話だったはずだ。自然と、だが確かにこの話題が出た。


「なぁ、同棲のことなんだけど」



美夏は息を呑む。


「まだ、踏ん切りはつかない? 俺としてはお前のタイミングでいいと思ってるけど、お前の気持ちを分かっておきたくてさ」


「それがね・・・修太郎くん・・・」


「うん」


「すぐにでも、貴方と同棲したい」


天地がひっくり返るかと思った。それくらい嬉しかった。


「ホント、マジ!?」


「うんほんと、このソルトレイクシティも好きだけど、君と一緒に過ごす時間のほうが、私にとっては大切だった思えたの」


「やったー! じゃあ詳しい日程決めようぜ!」


楽しそうに、本当に楽しそうに少年は話す。


二人の電話は長かった。同棲できる日を楽しみにしながら、少女は今夜も眠りにつく。





もしも彼女に数週間後の、修太郎との同棲初日の、修太郎の邸宅の惨状を、正確に占う力があったのなら、果たして彼女は同棲を承諾したのだろうか。





                       四





三日前に、修太郎はシカゴにて、とある大企業の女性社長と食事をした。


二日前に、修太郎はソルトレイクシティにて、とある占い師の手作り料理を食べた。


昨日、修太郎はマイアミのビーチにて、一人の青髪の少女にサーフィンを見せつけた。



そして本日、修太郎はニューヨークに来ていた。


このアメリカの大都会のとある喫茶店にて、修太郎は金髪ロングのイタリア人、エリーザと食事をしていた。



傍から見たらごくありふれたカップルに見えていただろう。幸せそうなカップルに見えていたことだろう。


「ねえねえ修太郎、ここのサンドイッチ、とってもおいしい!」


「ああ、おいしいな。食べ終わったらどこか行くか」



二人はニューヨクにある遊園地に行くことにした。


そこでも二人は仲良く話しながら、様々なアトラクションを楽しんだ。



修太郎はどちらかといえば頼りがいのない人間だが、懸命に日々を生きるその姿と持ち前のやさしさで、目の前の女の子のハートを射止めた。エリーザは修太郎とは対照的に頼りがいのある女の子だが、自分ほど頼りがいがないのに、懸命にスピーチする彼の姿はとても魅力的だった。


それは当人たちにとってもそうであり。こんな幸せな日々が一生あるんだろう、そう思っていた。




少女はとても楽しかった。この少年と恋人でいられて。


少女はとても誇らしかった。こんな素敵な男性のハートを射止められた、自分自身が。


遊園地でのデートも済ませた二人はプライベートジェットで家路につく。



マイアミの彼の家でテレビを見ながら二人は過ごす。


どうやらテレビは浮気特集らしい。何組ものカップルが現れ、男性が、または女性が浮気していた時の心境を語っている。



胸がデカかったから、やっぱおっぱいがないとな。


イケメンにふらふら~ってつられて、ブサイクな彼に飽きた、男を跪かせているのが絶景だから。





女を複数人従える快感がたまらないから、という意見もあった。





そんな感じで、多くの人間が多種多様な感想を述べている。割と男女関係には潔癖だったエリーザは気分が悪くなり、チャンネルを替えようとした。


その時、修太郎は口を開いた。





「こういう、浮気したり、愛人作ったり、ハーレム築いたする人間って、最低だよな!」





「・・・・」


その時のエリーザの胸には心地よい何かが流れた。


「そうよねー。流石の私もこれは許せないわ」


軽く返したが、少女の胸中は極めて軽く、そして幸せな心地だった。



エリーザはまだ彼とこの家で、同棲はしていないが、いずれはするつもりだ。ていうかしよう。


当たり前のことではあるが、この浮気しない宣言で、より彼に好感を抱いた。


いつしよう。早く彼と同棲したい。彼女に毎朝朝ご飯を作ってあげたい。そんなことを思いながら、エリーザは自分の頭を彼の胸に埋めた。





                       五





大企業の社長であるアメリカ人のハークレス、癒し系のドイツ人ミハエル、占い師の日本人優子、金髪イタリア人のエリーザ。


この四人は、修太郎の自宅マイアミで、八月一日に、出会うこととなる。



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