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そう長い時間ではなかったが、二人はただお互いを見ていたが、先に…琥珀色の瞳が眼を細め、
「参った…」と唇が動き…黒い瞳を揺らめかせるプリシラに微笑んだが…
「・・」となにか呟くと…琥珀色の瞳は、急に黒い瞳に怯えるように伏せて
「左腕は…このままで良いと思っていた。それはマチルダへの供養でもあり、そしてそれは……心を揺さぶるような思いは…もうこりごりだったと思ったからだ。だから…左腕は…このままで良いと…思っていた。」
バクルー王はそう言って、顔を上げプリシラを見た。
「だが、そんな風に思っていた俺が…マチルダにやったはずの左腕をおまえに求めた。俺はおまえの手で作られた左腕で人生を、新たな人生を掴みたいと思ったんだ。心が揺さぶるような思いは…なにかが変わって行くようで…恐ろしい。でも…欲しいと思った。その揺さぶる思いの中にあるものが欲しいと思ったのだ。」
プリシラはハッとして、唇を開いたが声が出なくて、ただバクルー王を見上げた。その唇をバクルー王は左手でまた触れ…微笑むと、呆然とするプリシラに
「人であることよりも、男であることよりも…王であろうと思っていた俺は…
女とはgive&takeでしか、側にいることが出来なかった俺は…
本当に、人面獣心の王だった。
いや…
俺は国を守る為なら、これからも人を、いやそれが女や子供でも利用する。それが君主の宿命だと思っている。そうであらなければ…この戦乱の世で、民を守りぬくことはできない。人面獣心の王と恐れられ、忌み嫌われる事で国が守れるのなら…なんて言われ様と構わん。
だが…それは今までとは違う。今までのように、根底に人を愛することを知らない、ただの獣ではない。
…見つけたんだ
…俺は…その根底を見つけたんだ。
プリシラ…おまえだけが、俺をひとりの人間に…ひとりの男にさせる。」
プリシラの眼から涙が零れ、その涙は次々を零れ落ちて行き…とうとう声をあげて泣き出した。
嬉しくて…幸せで…涙が止まらなくて、そんなプリシアに バクルー王は左腕でプリシラの唇に触れ
「プリシラ、愛している。」と言って、微笑んだ。
プリシラは…何度も頷き、やっと声にした。
「…私のほうが…ずっと前からあなたを愛してるんだから…」
「おまえは…」と言ってバクルー王は苦笑すると唇を重ねてきた。
プリシラは幸せで胸が震えて、崩れ落ちそうな体を、抱きしめられた左腕に手を伸ばした、温もりがあるはずがない金属の手に、温もりを感じプリシラは、(ありがとう。)と思いを込めて、その左腕にしがみついた。
長い口付けに、息ができなくて、プリシラは気が遠くなりそうだったが、熱い唇がそれに気がついたかように、僅かに離れた。プリシラは…離れた唇を追うように、バクルー王の唇に唇で軽く触れると、バクルー王の左腕に頬を寄せて
[この左腕は…私の幸せも掴みとってくれた。」と眼を瞑った。
ふぁっと体が浮いた気がした…
「えっ!?なに?」
気がつくとプリシラは、バクルー王の肩に担がれていた…。
「部屋に戻るんだが…」と平然とした声が聞こえ、
プリシラは剥れたように
「えぇぇっ!!なにこれ!」と叫んだが…大きな溜め息をつき
「ときめいていたのに…」と小さく呟いたが、バクルー王には、しっかり聞こえたらしく、肩が小刻みに揺れ、どうやら笑ったようだった。
(まぁいいわ。この人らしい…)とプリシラもクスリと笑った時だった。
体はまた動かされ、呆然とするプリシラに、バクルー王が
「約束だったなぁ…お姫様抱っこ。」
そう言って、顔を覗き込まれた。顔が真っ赤になっていくのが、プリシラは自分でもわかり、急に恥ずかしくて小さく頷いたが、(ちょっとだけなら…いいよね…)と、そっと腕を伸ばし、バクルー王の首に腕を回して、逞しい胸に頬を寄せた。
「…このまま寝室へ…おまえを抱きたい。」
(えっ?!)慌てて、顔を上げたプリシラに、少し困ったような顔が、プリシラを覗きこんでいた。
「あんな可愛い事を言った自覚はないのか?」と言って口付けると
「もう、待つのはごめんだ。」と…またプリシラの唇を唇で軽く触れ…
「愛してる…俺にすべてをくれ。俺もおまえに…すべてをやる。」
そう言って、腕の中からもう離さないというようにプリシラを抱きしめたが…抱きしめているはずの力強い腕が、まるで縋るように震えていることに…プリシラは、あのバクルー王が…と思うと胸が熱くなり…
唇が自然とバクルー王を求めて…開き
「…私を抱いて…」と紡ぐと、バクルー王の唇へと寄せていった。




