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序章
放たれた矢は俺には届かず、俺を庇うように両手を広げた女の体に、吸い込まれるように入っていった。
「お…おい!おい!何をやってんだ!!俺は…おまえを利用した男なんだぞ!」
俺の叫び声が部屋中に響き渡り、女はゆっくりと俺へと振り返えると、ほんの少し微笑み、瞳が一滴の涙を零しながら閉じる寸前…女のその唇が…「フレデリック…」と動いた。
俺は、獣のような叫び声をあげると、右手に持った剣で、女神像の下敷きになった、己の左腕を切り落とし、左腕から流れる血でふらつく体を、床に剣を刺す事で、倒れないように立ち上がると…女のもとに行き、右腕で抱きしめた。
「俺のために死ぬなんて!なにやってんだ!」
俺の声が…泣いていた。
怒鳴りながら泣いていた。