対立の街
かれこれ20分程歩いて、漸く部屋に辿り着いた。
「正装に着替えろ。連邦局本部に行くぞ。念の為、フェニックスを呼び寄せておくか。」
サトキがそう言うと、一羽の赤い鳥が部屋へと入って来た。
「コイツがフェニックス、因みにコイツはサイズが大きくなる。最大で、カストルを飲み込む程度だ。
「えっ!」
「通常、四元獣は能力者と一体化するか、具現化武器として存在する。コイツは俺のローブに変化する。」
フェニックスはサトキを包み込みローブに変身した。
「コイツは火の四元獣の癖に、闘いを好まなくてね。火の四元獣で防御型は珍しいんだよ。」
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「それじゃあ、行こうか。四元については、戻ってから詳しく話すよ。」
「......うん。」
部屋を出て、廊下突き当たりの階段を降りる。
「僕らの部屋はB2Fだ。隠し通路はそこに繋がってる。外に出るには《トランスポート》を使うが、この施設内で《トランスポート》が可能なのはB3Fのこの場所だけだ。ちょっと危険だけど、連邦本部に直接するから。」
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《トランスポート》
「あぁ、やっぱりな」
「?」
「前見てみ。」
すると、周りに連邦局員と思われる人間が囲んでいた。
「エレベーターに急襲とは、いい度胸してますね、シノさん。」
「ガキンチョに阻止されたと言っていたが、やっぱり君だったんだね、サトキくん。」
「ココでコウタを殺そうと思っても、無駄ですよ。僕がいますから。」
「そうだねぇ、確かにココで彼を殺すのは難しそうだ。だけど、忘れてないかな。コッチにはヒロがいるんだよ。」
「連邦局本部はついに保守派に乗っ取られましたか。それは残念。ヒロは殺して貰って構いませんよ。」
「おいサトキ、どういう意味だよ。」
「そのままの意味だよ。あいつは自分のミスで捕まった。自業自得という奴だ。シノさん、今日は本部長に会いに来ただけですから。大人しく退いてもらえますか?」
「クックックッ、面白い子だね。しょうがない、お前ら下がっていいぞ。次会う時は覚悟しといてね。バイバイ。」
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「どういう事だよ。ヒロが死んでもイイって。」
「大丈夫。あいつは死なない。いや死ねない。」
「............」
「時期に分かる。」
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「着いたぞ。」
連邦局12階、扉には『連邦局総合執務室』と書かれている。
「失礼します。」
「おう、入りなさい。」
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「そろそろだと思っていたよ。サトキと......コウタだね。大っきくなったなぁ。こんなに可愛くなるとは。」
「おじさん、締め上げますよ。」
「おっほ、失礼。」
「コウタよ。」
「は、はい。」
「良い返事じゃの。これからお主は、連邦局総合執務室室長補佐に任命する。」
「へっ⁉︎」
「なに、役職を付けたのはお主の身を守るためじゃ、連邦局の人間を殺める事は、局法で禁じられておる。」
「あのー、本部長ボクと知り合いなんですか?」
「そりゃ、おまえの......」
「おじさん。」
「失敬。まぁ小さい頃に会っとるんでの。」
「......それでボクは補佐で何を?」
「補佐と言っても肩書きだけじゃ。ここで何かをしてもらうわけじゃない。」
「これからボクはどうすればいいんですか?」
「お前さんは早くその力を制御せねばならん。その為に簡単に言うと、学校に行ってもらう。四元の基礎から習ってもらわねば為らん。お主は現世界ではトップの成績と聞いた、特別に座学は特進に転入してもらう。実技は特別顧問を用意した。 入ってくれ。」
バタンという音と共に1人の男性が入ってきた。
「初めまして。カイと言います。」
「カイはこの世界で五指に入る能力者じゃ。サトキもおる事じゃし、師として申し分ないじゃろう。学園はサトキに連れて行ってもらいなさい。座学は同じ物を受ける。」
「......ヒロは......」
「ん?拘留期間は過ぎておるぞ。彼自身が、拘留延長を希望しているから、出て来てないだけだ。」
「会えないんですか?」
「会えない事もないが、今の状況では危険だというのが、上の判断なのだ。」
「ヒロがキケン?」
「いや、キミだよ。キミが能力を制御できるまで、接触させることはないと思ってくれ。」
「............」
「何にせよ、その力を封じる事じゃ。カイ、あとは任せたぞ。」
そう言うと、本部長は部屋を出て行った。
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「............」
「キミたちは革新派みたいだね。僕みたいな保守派の人間は嫌いだろう。とは言っても、保守派にも右も左もあるんだ、みんなが彼の事を邪険に思ってるわけじゃない。ボクの任務はある意味で君たちの味方だ。キミが力を制御出来れば、保守派の一部は革新派に傾く。」
「僕はあなたを信用してない。」
「信用してくれなくていい。僕は任務をこなすだけ、それ以上でもそれ以下でもない。ただ、訓練にはキミも参加してもらう。これは本部長の命令だ。」
「............」
「訓練は明日から始める。今日はもう帰っていい。それから学園の入学式は一週間後だ。それまでに備品を揃えておくように。」
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「サトキ、カイはどんな人なの?」
「あいつはお前の兄貴だ。」
「えっ!」
「あいつはお前の兄貴なのに、お前が生まれた時保守派に回った。僕はあいつがいけ好かない。何を考えてるか分からない。」
「きっと何か事情があったんでしょ。とにかく、今は師匠なんだし。」
「............」