目覚める街
「――コウタ――コウタ――」
ボクは誰かに呼ばれたのを感じて、目を覚ます。目を開くと、部屋は暗く、夜の様であった。ボクの左手に感触があった。いつもの感触にホッと安堵した。ヒロはボクに持たれて寝ている様だった。ちょっと重いよ。
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ここはどこだろうか。ベットとヒロ以外に何もない。あれ?ヒロの頬に傷なんてあったかなぁ?そもそも、あれからボクはどうなったんだろうか。
ガチャ
「起きたね?」
灯りが点いて、部屋に年配の男が入ってくる。ヒロも起きた様だった。
「コウタ。良かった。心配したんだから。サダさん本当にありがとうございました。」
「いや、いいんだ。それより、幾つか質問したい事があるんだ、ヒロくん少し席を外してくれるか?」
ヒロは静かに頷いて、部屋から出て行った。
「キミがコウタくんだね?キミは昨夜の事をどれだけ覚えているのかな?それから、四元についてどれだけ知っているのかな?それと......」
「あのー、あなたは一体?」
「あぁ、失礼。まだ名を名乗っていなかったね。私はサダ、連邦局治安調査部部長だ。」
「連邦局?ですか?」
「あぁ、それも後々話そう。」
「キミは四元学でトップだと聞いている。昨日の事件について、察しの良いキミなら心当たりがあるのではないかな。」
「まさか......」
「その通り、あれは四元の力によるものだ。キミは中学2年生だったね。という事は現世界での四元学は全て習い終わっているな。この世界は現世界とエレメンタルの2つから成り立っている。元々は一つの世界が、2つに分離したのだ。四元が現世界で途絶えたのは、四元を扱う人間がエレメンタルを創造し、そちらに移ったからなのだ。連邦局は2つの世界を統括する組織だ。ジンはエレメンタルの人間でキミの命を狙っていた。」
「なぜ、ボクの命を?」
「なぜって、キミは知らないのかい?」
「............」
「そうか、ではそれは追い追い話そう。それにしても、流石と言うべきか、キミは相当な能力者だな。」
「............」
「――もしかして、記憶がないか。ムリもない。しかし、あれが暴走だとすると止める術を覚えなくてはならないな。」
「あの、昨夜何があったんですか?」
「昨夜ジンがキミを殺しにきた。覚えているね?」
「ハイ。」
「キミはリヴァイル川の水を龍に変えて彼を倒した。彼は間一髪エレメンタルに逃げた様だったがね。それから、長い事キミは暴走していたよ。連邦局の凄腕能力者達1000人係りでも町の被害を食い止める事しか出来なかった。」
「じゃあボクはどうやって......」
「ヒロくんさ。彼がキミの龍の中に飛び込んで行ってキミを抱きしめた。友の力というのか、愛の力というのか。」
「じゃあ、ヒロの頬の傷は......」
「あれは強力な四元によるものだから、一生消える事はないだろう。彼には、この事をキミに話すとキミが自分を責めるから伝えないでくれと頼まれていたんだが......」
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「キミはこれからエレメンタルに来てもらう。キミの力は強大だ。連邦局としてもキミの力を危険視する声も大きい。キミが生きていくには、絶対にその力を制御しなければならない。それから、ヒロはエレメンタルで拘留される事になってる。おそらく、もうエレメンタルに着いた頃だろう。」
「⁉︎」
「彼は連邦局の人間だ。勿論キミのいとこである事は事実であるし、キミの見てきた彼は、間違いなく彼である。しかし、彼は生まれた時から、任務を授かっている。それは、キミの暴走を止める事だった。その任務を失敗したから、罰を受けるそれだけの事だ。そもそも彼1人でこなせる任務でなかったんだ。そう大きな罰になる事はないだろう。」
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「キミはリヴァイアサンの末裔だ。正統血統であるし、キミの力は歴代でもトップクラスだ。生まれた時にキミを葬るか、議論された程だ。キミの父上がサタン討伐と引き換えに、キミを生かしておく事になった。」
「じゃあ父は、ボクの為に......」
「まぁ、良く言えばそうかな......」
「なぜ、急にボクの力は......」
「リヴァイル川は名前の通り、リヴァイアサンからきている。キミの力が共鳴したのも合点がいく。」
「............」
「キミの体調が戻り次第、カストルに向かうよ。」