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イケメン?! 私の光る君(源氏物語より愛を込めて)  作者: としろう


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ポップコーンの味は恋の味

「あっ!姉ちゃん、光、お帰り〜。一枝ばあちゃん元気だった??」

「…元気だった?じゃないわよ!お見舞いも行かないで何やってたのよ!」

「まあ、そう怒んなって。今度の日曜にでも行くからさ!」

「たくっ、調子いいんだから。」

「光、病院はどうだった??」

あさみの小言をひらりとかわし、克己は光に話を振った。

「栗羊羹が美味しかったでおじゃる。」

「…いや、他に感想あるだろ?!」


「そういえば、明日は満月と聞いたでおじゃる。克己殿!明日は皆でお月見と行きましょうぞ!」

「お月見〜??俺はパス!興味ないわ」

「なんと⁈お月見に興味なき者がこの世におるとは?!」

「いや、普通にいっぱいいるだろ。大体、光も団子とか食べたいだけだろ?」

「なっ!?失敬な!!」

光が憤慨しているが、克己は無視して話を進める。

「あっ、そう言えば、光がウチに来た日も満月だったよなあ?」

「…そう言えば、そうね。」

あさみは光が現れた夜の事を思い出していた。

巻物から現れた?謎の男。

およそ現代のイケメンとは程遠い下ぶくれ、白ブタの様な男。

誰も知り合いのいない、見知らぬ世界に迷い込んだ男。

それでも“月が綺麗だ”と微笑んだ男。

そしてー。


「若紫はー」

「若紫は大事なく、過ごしているであろうか。」

光がポツリと言った。


若紫。

光源氏が生涯で最も愛した女性だ。

そう、光は向こうに最愛の女性を待たせている。

戻りたい…はずだ。


「戻りたいの?光は?」


!?


克己が何の躊躇もなく、光に聞く。

あさみはわかってても耳を傾けてしまう。

そして、願ってしまう。


「…戻りたい。…もちろん!きっと久しく麻呂が会いに来なくて、心細い日々を過ごしているはず!今直ぐにでも若紫をこの手で抱きしめてあげたいでおじゃる!!」


そりゃ、そうよね。

大好きな人が待っているんだもの。

それに、向こうじゃイケメン皇子なんだし。

こんな白ブタ扱いする世界に未練なんてないわよねぇ。


「なのじゃが…なんということか。麻呂としたことが、今のいままで、そのような事を忘れてしまっていたでおじゃる…」

「うわっ!マジ??光、ひでーな!やっぱり光はたらしだな!」

克己が呆れて言う。

「たらし??まあ、でも確かに麻呂自身も酷いと思っているでおじゃるよ。いくら、あまりにも違う暮らしぶりに驚いてしまったとはいえ、どうして、愛しい女性の事をも思い出さなかったのか…。どうしてかの…のお?…あさみ殿。」

光が急にあさみの方を見る。

あさみは急に自分に振られて、びっくりしてしまった。


「え??や、そんなの…光が根っからのプレイボーイだからよ!!」


そう言うと、あさみは階段を駆け登った。


…気持ち…見透かされた?


「あさみ殿!?」


残された光と克己。


克己が光の肩を叩いて言った。


「嫌われたな」


「なっ!?またでおじゃるか!?」


克己はケラケラ笑いながらリビングに戻っていった。




「…さみ、あさみってば、聞いてる!?」


…!?


「…え??」


「もう〜、さっきから読んでるのに全然返事しないんだから」


見ると、ゆみがふくれっ面であさみの目の前に立っていた。

セリが隣でクスクス笑っている。

「…あ、ごめん、ぼーっとしてた」

「まったく。今日、あさみバイト休みって言ってたでしょ?前から言ってたポップコーンでも食べて帰ろうよ」

「あっ、いいね!行こう!」

あさみは直ぐに帰り支度を始めた。





「…大丈夫??」

ふと、セリがあさみに尋ねた。

「え?何が??」

「…いや、だってあさみ、朝からぼーっとしてたよ。ねえ?」

セリがゆみに振る。

ゆみも頷く。

「あんた、今日、いつも以上にオカシイよ。」


いつも以上には余計じゃないかと思いつつ、自分でも心ここに非ずな状態だったと思う。

昨日はあんまり寝られなかった。

原因は…わかってる。

考えようとしなくても、どうしても考えてしまう。

そして、辿り着く。

でも、認めたくない。

まさか。

まさか、イケメン好きのあたしがどうして。


光の事を…


「好き?」


「ええっ!?」

あさみは思わず、大声を出してしまった。

ゆみがビックリしてこっちを見る。

「いや、ここのポップコーンって、しめじバターとマツタケ醤油が二大人気らしいんだけどどっちが好きかと思って聞いたんだけど…そんなにびっくりされると思わなかったわ。」

「ああっ…ごめん、えっと、しめじバター?」

え?その二択しかないの?っと思いつつもあさみは答えた。

「そうね、なんせ"香りマツタケ味しめじ"ですものね」

「なんせね」

そう言って、よくわからないが二人が納得したようなので、あさみはとりあえず、ほっとした。


もう、認めるしかないのだろうか。

あさみはポップコーンを食べながら、光と過ごしたこの一か月間を思い起こしていた。


そして、


あさみはある結論に達した。


「ねえ、ゆみ、セリ…」


「ん??」


「あのさ…」


「ポップコーンにキノコ味を求めなくても良くない?!」


二人は目を合わせる。


「…そうだね。」

「…まずいってわけじゃないんだけどね。」




3人はその後、無言でポップコーンを完食した。



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