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イケメン?! 私の光る君(源氏物語より愛を込めて)  作者: としろう


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10/18

バイト

「おはようございます〜!」

始業10分前。いつもよりギリギリになってしまったので、あさみは急いで制服に着替えた。

あさみのバイト先はいわゆるファミレスだ。大手のチェーン店ではなく江戸川区周辺でしか見たことがない。独自路線の、よく言うと地域密着型ファミリーレストランと言ったところだ。

慣れた手つきでサロンを(要はエプロンだが、何故かうちではサロンと言っている)締めると、フロアに向かった。

途中の入り口で、秋山さんと店長が何やら揉めていた。

「え~!困りますよ、店長~。私だって予定ありますから~!」

「まあ、そう言わずにさ、2時間、いや、この際1時間でもいいから、ねっ??」

「でもぉ…」

秋山さんは、明らかに嫌そうな顔をしていた。ツインテールの髪を指先でクルクルまわしている。彼女の癖だ。

「店長、秋山さん、おはようございます。」

「あっ!!笹沼さん!待ってたよ~」

「どうしたんですか?」

「それが…、伊藤君が今日…熱を出してしまったらしく…休むって連絡入ってさ。秋山さんにちょっと時間伸ばせないか頼んでたんだけど…」

店長がちらっと秋山さんを見る。

秋山さんは相変わらず、嫌そうな顔をして顔をそむけた。

首を縦には振らない。

「まあ、…でも、今日平日だし、一人くらいいなくてもねえ?」

あさみが明るく言ったが、店長はさらに加えた。

「実はさ…中西君が今日から試験休みに入ってたんだけど…その…」

「店長がその事すっかり忘れてて、シフトに入れちゃってたんですよね?店長!」

秋山さんがあきれ顔で店長を軽く睨む。


うむっ。

明らかに店長が悪い。


「そうなんだけどね~、今日だけ‼ね?ケーキ食べていいからさ!お願い!」

店長は必死で秋山さんに頼み込んでいた。秋山さんは相変わらず渋っている。無理もない。ちなみにここのケーキの味は微妙だ。ケーキごときに心は揺れないだろう。

だが、確かに流石に二人も抜けるのはきつい。

あさみも一緒に秋山さんに頼んだ方がいいのかどうか迷っていた時、お店のベルがなった。

―カランコロ~ン―

「いらっしゃいませ~」

あさみは、一先ず秋山さんの事は店長に任せて、フロアに出ることにした。


ん…!?


「あさみ殿!」

「姉ちゃん~、暇だから遊びに来たぜ」


「あら?笹沼さんの弟さん?」

接客してくれた、松井さんがにっこりとあさみに微笑む。

「…えっ…ええ、まあっ」


あさみは何故か悪寒が走った。


「お姉ちゃん、今日は忙しいからあんたたちの相手してる暇ないかも」

とりあえず、二人に水を出しながら、話す。

たとえ、秋山さんが残ってくれたとしても、一人いないことには変わりは無い。

秋山さんも…あの様子じゃ、残ってくれて1時間というところか…。いる間に先にできる事はやってしまおう。

「別にいいよ。光が姉ちゃんに会いたいって言うから連れてきただけだし。」

「なっ…!会いたいとは言ってないでおじゃる!!マロはただ、あさみ殿がどの様に働いているか見たかっただけであって…その…」

光があまりにも真っ赤になって否定するので、あさみまで何故か恥ずかしくなってしまった。


「ああっ、バイトの制服姿が見たかったってことか。光って結構むっつりなんだな。」


…違うだろ。


「この世界の女子は実に変わった着物を着ていて、非常に興味深いでおじゃる」

光はむっつりの意味がわからなかったのか、何故か納得している。


「まあ…いいわ。決まったらそこのボタン押してね。それから、克己‼」

急にあさみが克己を睨みつける。

克己は、勝手にバイト先に来たことを怒られるかと、思わず、構えた。

「な!なんだよ…!」

「…その、スウェット…外で着るのはやめて。」

思いもよらなかったあさみに言葉に克己はキョトンとした。


「ええ?なんで?!めっちゃカッケーじゃん!あにま~る!!」


…。


弟のイタイセンスを目の当たりにして、一抹、いや、かなりの不安を覚えるあさみだった。


―そういえば、母さんがお父さんのお古って言ってたっけか―

あさみの中でのかっこよかった父の面影が少しほころびかけてきたその時、店長がこっちに向かってきた。

「笹沼さん、そこのお二人はお知り合い」

いつになくニコニコ顔で店長が話しかける。

「ええ、まあ。その、こっちが弟の光で、向こうが…えー、いとこ!いとこの光です!」

どういう知り合い?って聞かれても面倒なので、とリあえず光は従妹にすることにした。

「どうも、克己です。」

「いとことやらの光でおじゃる。」

「…??」

「ああっ!!ちょっと、この人変わってて!今マイブームが平安言葉らしくて!!」

あさみは慌てて付け加える。我ながら無理のある言い訳だった。

店長は訝しげな顔をしながらも、とりあえず、深くは突っ込まないでくれた。

そのかわり、

「ねえ、君たち、今日は時間あるの?」

「まあ、暇だからこんな店にいるんだろうな」

克己の失礼極まりない言葉も店長はスルーして続けた。

「だったらさ…」


あさみは悪寒の訳を理解した。




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