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第6話 向けられた悪意



 鐘の音が聞こえて来て私は目が覚めた。どうやら寝ていたらしいがこの都にあるおおきな教会が鐘を鳴らしているのでもうお昼なのだろう。この教会は朝、昼、晩と鐘を3回ずつ鳴らす。まだ暗くはなってないのでお昼という事が分かったわけ。


 5歳のときに新しく買い与えられた大きなベッドと自分専用の部屋。赤ちゃんのころは両親の寝室にベビーベッドを置いて寝ていたけど一人で寝るのに慣れるために用意された。結構広くて窓も大きいものが一つ。私専用の小さな机まで置いてある。結構お気に入り。



「アルティス様、ご飯の用意が出来ていると奥様が。」


 基本開けっ放しにしている扉からミシェラがベッドに寝ている私を無表情で見おろし、告げる。70にしては曲がってない腰と綺麗に揃ってる歯。そしていつも気配なく近づいてくる。私ははい、とだけ答えると私の返事を聞かずUターンしてもう部屋を出ていったミシェラの後姿を見送った。いつもながら行動が早い。いや、歩くのが速いのか。




 朝食を食べたテーブルにはお母さんの得意料理、ハミュのサンドイッチが並んでいる。ハミュと呼ばれる鶏肉のような繊維質の肉をお母さんは甘辛く味付けして野菜と一緒にパンにはさむ。なかなかうまい。


「あ、アル起きたのね?今から食べるから手を洗って来て。」


 お母さんの言葉にこくりと頷きそそくさと洗面台へと向かう。


 蛇口には水魔法の魔法陣が刻まれていて、ここをひねると魔法によって生み出された水がじゃばじゃば出てくる。らくちんらくちん。でも、私はまだ身長的に足りないのでユーリグがちっさいころにお父さんが作った踏み台を使わせてもらう。これはソリスも使って来たらしい。


 鏡に映る自分は前世とは比べ物にならないほど整った顔をしている。髪色もお母様譲りの金髪、そして垂れ目。目の色はもともとはお父さんと同じブルーだったらしいのだけど、今は紫。初めて魔力過多症の症状が出た時に後遺症として変わってしまった、らしい。でも紫の瞳は特に珍しいものではないらしいのでまあいっか、と諦めている。


 相変わらず慣れる事のない自分の美少年っぷりに惚れ惚れするが、とりあえず今は手を洗い、ハミュのサンドイッチを食う!


 袖をまくって手を洗い、ついでに寝起きだから顔も洗っとく。よし、これでいいだろう。踏み台からぴょん、と飛び降りると(50センチほど)リビングへと向かう。



 頭の中はサンドイッチでいっぱいでリビングの扉を開けると目の前には人。思わず驚いて一歩後ずさる。私の身長ではその人の顔は頭を上げないと見えない。でも、このモスグリーンのスカートに白い前掛けをしてる人は・・・・やっぱり、ミシェラ。


 なんか言われるのかなー、とか能天気な事を思っていた私に降りかかってきた言葉は、


「・・・魔力が多いなんて、忌み子ね。」


冷たくて、痛い言葉だった。






 その後の楽しみにしていたハミュのサンドイッチの味はよく覚えていない。気付いたらベッドに戻っていた。

 あのときミシェラさんの声はキッチンにいたお母さんには聞こえていなくて、悪かったのか良かったのか、複雑。


 まあ、なんとなく嫌われてる事は分かってたし、私もミシェラさんを嫌えばいい、なんて頭では片付けれても体はこの世界で生まれて初めて向けられた嫌悪の瞳に怯えて震えていた。それは抑えようと思っても抑えられるものではなかった。


 だから嫌なんだ。人は心の中では何を思ってるのか分からない。だったら人と深く関わらなければいい話だ。



 がばっと布団の中に潜った私は毎日昼食後にサフィ先生から飲むように言われていた薬を飲む事をすっかりと忘れていた。







ありがとうございます。

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