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第4話 嫌いになることはない、絶対に

お久しぶりです。

今回は残酷描写?がありますので、血やスプラッタが苦手な方はご注意!

でも、できるだけ薄くしてあります!


 ぎゃあ、か、ぎゃお、か判別はできないけど、とにかく大きくてこの森中に聞こえたんじゃないかと思う。そこに含まれている感情は怒りや恐怖、憎悪などが見え隠れしていて一瞬その迫力にちびりそうになったほど。いや、ちびらなかったけど。


 その獣のような声の方向から黒く禍々しい光が空を裂くように上へと飛び散っている。その魔力から俺は確信した。あそこにいるのはフォルナだということに。


 指紋や声紋があるように、魔力も一人ひとり違う。そこにフォルナが居ることを確信した俺は震えそうになる膝をぺしっと叩いて気合いを入れた。ちゃんとフォルナのお手伝いがしたくて、役に立ちたくてここに来たのに今何へこたれてんだよ、自分、しっかりしろよ。役に立たないだけの居候にはなりたくない。俺を拾ってくれたフォルナには相当の恩返しがしたい。


 俺は走る。そこに道という道はなかったけど、その向こうにはフォルナが居ることを確信しているから何も怖くない。鋭利な見たことないような雑草が俺の皮膚を切り裂き、流血しているのが分かったけど、不思議と痛さは感じなかった。


 だんだんと黒い光が白くなっていっている。それと同時に光の威力も弱くなってきているのかさっきより規模が小さい。獣の声もあれ以来聞こえてこない。フォルナに何が起こっているのかは分からないけど、俺はとにかく早く会いたかった。


「フォル・・・・ナ・・・・?」


 そこに目を思わず瞑るような惨劇が待っていたとしても。


「アル!どうしてここに!」


 いつものように語尾を伸ばさず焦ったようにこっちへと向かってくるフォルナがスローモーションのように見える。そのフォルナの周りには赤黒い液体が散らばっていて、ところどころ落ちているモノをよく見ると『人間だった』ことが分かった。一番奥にはさっき俺が聞いた悲鳴の主であろう大きな大きなオオカミのような動物が白い毛皮を真っ赤に濡らして倒れている。


「・・うえ、うえええ。」


 夜食べたものが胃から逆流してきた。胃がひくひくと痙攣しているように感じて結局胃液になるまですべて吐き出した。

 

 俺が落ち着いたころ辺りは朝日で白く輝きだしていた。それと対比するかのように今までは暗くてよく見えなかったところもよく見えるようになってきたため俺はその時気付いた。白い獣の頭が切断されていたことや、周りに落ちている肉塊は人間の切断された手足であることに。目を見開き凄い形相で落ちている頭だけになってしまった死体が頭から離れない。俺がそれらを見ていることに気付いたフォルナが俺の蹲った背中を撫でながらもう一方の片手で魔法を行使し、全て消した。そう、全て。


 そこにはもう何もない。獣も、肉塊となった人間も、おびただしく流れ出ていた血液も。そこはただの森になっていた。


「フォ、ルナ、・・・。」


 フォルナの黒いマントにすがりつく。今までそんなことできなかったけど、今は誰かにしがみついていたかった。生きている人間の温もりを感じたかった。


「アル、アル、ごめんね、・・・ごめんね。」


 フォルナは俺にずっと謝り続けた。勝手に来た俺が悪いのに。フォルナはきっと俺に見せたくなかったはずなのに。


「ごめんなさい、ごめんなさい。」


 俺もフォルナもずっと謝り続ける。かたかたと震え続ける両手をフォルナの腰に巻きつけて顔を胸にすりよせる。フォルナが起こした惨劇を見ても俺はフォルナが嫌いになれなかった。嫌いになることなんてできない。


 結局俺らは太陽が真上に上るまでずっと二人でしがみついていた。明日が来たらまた普通の日々に戻れることを信じて。








ありがとうございました。

テスト週間にパソコンをいじる作者より。

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