第3話 フォルナの謎、追求
久しぶりだ・・・。ちょっと忘れかけてました・・・。
「アールー、ねえお仕事手伝ってー。」
フォルナの所に住み始めてから、ちょくちょくこういうときがある。お仕事を手伝えと言う割に、大したことをさせてはくれない。だからいまだにフォルナの仕事が分からない。謎だ。
「えっと、今日はこの薬草に付いている土を取ります。」
「それだけ?」
「うん、そうだよお。」
フォルナの垂れた二重の瞳が優しく俺に笑いかける。お世話になっている身としては、もっと役に立つようなことがしたいんだけど、フォルナはこういう雑用ばかり俺に任せて自分ひとりで危険な仕事をしている、と思っている。そう思うには理由がある。フォルナは俺が気付いていないと思っているのだろうけど、夜中に出て行ったり、かと思えば、早朝に帰ってきている。そして決定的なのはマントに付けてくる血。洗濯を担当している俺にばれないようにしているんだろうけど黒地のマントに付いた血は見にくくてフォルナ自身も気づかなかったんだろう。
「できた。」
「おお、相変わらず仕事が早いねえ。助かる。」
ぽんぽんと頭をなでられるのは嫌いじゃない。けど、これでなんでも誤魔化せられはしない。だから俺は決めていた。今晩、フォルナが出ていくようであれば、ついて行こうと。フォルナが俺に言わないってことはよほど何かの理由があってのことだろう。でも、俺だってもう12。前世と合わせると精神年齢30を超えるおばちゃん。もう並大抵のことでは驚かないと言える。だから今日こそ俺はフォルナの仕事をつきとめようと思う。
「アル、もう寝る時間だよー。ベッドに行きなー。」
「うん、フォルナ、一緒に・・・。」
「ん?なあに?」
「ううん、なんでもない。おやすみなさい。」
フォルナのベッドで一緒に眠れたらすぐ気付けるだろうけど、怪しまれるだろうからやめとこう。それになんか照れるし。
フォルナから背を向けて自分の部屋へと走る。
「(アル・・・。さみしいのかなあ。)」
背中に感じるフォルナの温かな視線に俺は恥ずかしくなった。
深夜。ぎぎ、ばたん、と玄関の扉が開いて閉まる音が聞こえた。フォルナだ。フォルナが出て行ったんだ。俺は確信して急いでベッドから出てこっそり玄関を出る。そこにはすでにフォルナの姿はないけどフォルナの魔力を感じることができた。きっとフォルナは転移魔術を使ったんだ。フォルナの魔力痕からフォルナの行き先を辿る。膨大な量の魔力を行使するのは結構疲れる。けど、こういうときにしか役に立たない魔力が今はありがたかった。もし、魔力が平均くらいしかなかったら魔力痕は見つけれてもそこから後は追えない。この膨大な魔力量があってこそ転移魔術で移動したフォルナが追えるわけだ。
額から零れた汗が地面に落ちた時、やっとフォルナが転移した場所が判明した。よし、やっと行ける。フォルナの部屋で盗み見た転移魔術の方陣を思い浮かべる。地面にはその方陣が光とともに浮かび上がり、またたく間に辺り一面光に覆われた。そして、やっと光が消える頃、俺は転移魔術に成功したことを自分の目で確かめることができた。
そこは一面木、木、木。鬱蒼とした木に囲まれた場所。でも、俺がいる場所は故意に切り拓き広場のようなスペースが作られていた。
フォルナ、フォルナはどこだ。一瞬周りの光景に呆気にとられていたが、そんな場合ではない。フォルナが近くにいるはず。きょろきょろと周りを見るが全然人影すら見えない。夜中で真っ暗だし、急に心細くなる。早く見つけてフォルナのお手伝いを・・・・。
その一心で動き出した俺を追い詰めるかのように後ろの方から獣の叫び声のような大きな声が聞こえてきた。
ありがとうございました。