第12話 朝食での出来事
感想ありがとうございます!
ミシェラのアルいじめはまだまだ続きます。
今日は珍しく家族全員で朝食をとることができた。なかなか珍しいことだからちょっと嬉しくて私自身舞い上がってたんだと思う。パンユ以外のものを口にするのも久しぶりだったし、ミルの乳も結構好きだから私のコップに注がれたそれを見てテンションが上がった。
「それでは皆でいただこうか。」
お父さんの号令で私たちは食べ始めた。私の両隣りにはユーリグとソリス、そしてお誕生日席は大黒柱であるお父さん。そして私の前にはお母さんとミシェラ。正直ちょっと嫌だったけど、あんまり気にしてなかった。それよりやっぱ皆で食べるほうが美味しいなあなんて呑気なことを考えていたんだ。
机の中央には、大皿にナンのようなパンが積まれててまだ6歳時の私の体では少し取りづらかった。でも、いつものように少しお尻を浮かしてちょっと手を伸ばせば届く距離。私はそれが食べたくなって手を伸ばした。
ガチャン
伸ばした手が私のミルの乳が入っているコップを盛大に倒して、ミシェラのごはんにかかってしまったのだ。
私は瞬間的に頭から血の気が引いて、やってしまったという思いでいっぱいになってしまった。よりにもよってミシェラに、どうしよう、また怒られる・・・!
「ごめ、んなさ、い・・・!」
急いで椅子から降りて布巾を取りに行く。兄たちが私の名前を呼んでいる気もするが今はそれどころではない。
ミルの乳はミシェラのごはんだけでなく、テーブルはもちろんミシェラの服にまで飛んでしまっていた。慌ててミシェラの服に手を伸ばす。まだ、大丈夫、すぐ拭けばなんとか・・・。
「坊っちゃん、」
ミシェラの声に体が反応して体がびくついてしまった。・・・?ミシェラの声が優しい。どうして、怒ってないの?
「坊っちゃん、私は大丈夫でございます。」
・・・・え?
「アル、ミシェラもそう言ってくれることだし、落ち着いて、ね?」
横から聞こえてくるお母さんの声にハッとする。あ、そういえば家族の前だったと。ミシェラの顔をおそるおそる見上げると、私は凍りついた。ミシェラは決して許しているわけじゃない。目が、今まで以上に冷たく私を穢れた汚いものというふうに認識しているからだ。凍りついて動けない私にミシェラは私の手を布巾ごと握りしめた。
「坊っちゃん、私の粗末な服を綺麗にしていただこうとこんなに必死になってくださり、ありがとうございます。」
ミシェラの手が、私の手をギリギリと締め上げる。
「そのお気持ちだけで私は十分でございます。それ以上に坊っちゃんがここまで立派にお育ちになられたことが私はとても嬉しゅうございますよ。」
「はは、ミシェラはまるで第2の母のようだな。」
「そうね、ミシェラほど私たちの家族を思いやってくれる方はいないものね。」
お父さんとお母さんの言葉が耳を素通りしていく。相変わらずミシェラの手は私の手を潰さん限りの勢いで握りしめているというのに、誰も、誰も・・・。
「ああ、坊っちゃん。拭いてくださいましたお礼に後でお部屋で御本をお読みいたしましょう。坊っちゃんの好きな勇者のお話なんかどうですか?」
「あら!アルは勇者のお話が好きだったのね!お母さんは知らなかったわ!ふふ、よかったわね、アル。」
やっと離された手を握りしめて、ミシェラの言葉に眩暈がしそうになった。ミシェラは本なんか読む気はない。その瞳がそう語っているからだ。その時私は気付いた。ミシェラをとても、とても怒らせてしまっていることに。
ありがとうございました。