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第10話 正体

アルティス目線に戻ります!


 周りがうるさい。

 重い瞼を開けると知らない誰かが私の顔を覗き込んでいて突然の事に喉の奥でヒッ、と悲鳴にならない声を上げる。私のその様子にその知らない誰かは面白いものを見たかのように金色の瞳で弧を描いた。


「アルティス!」


 お父さんの声がその知らない誰かの後ろから聞こえてくる。


「メドキルア、アルティスは大丈夫なのか?」


「ああー、もー大丈夫サー。」


 ・・・・だからこの人だれ?メドキルア?

 藍色の髪をなびかせて私から身を引く姿に男の人かと思っていたけど、仕草などから女性かな、と思う。服装が黒一色っていうのが一番気になるけどね。


「アル、よかったな。」


 微笑んで私の頭を撫でてくるお父さんの顔は何故か右頬が腫れている。私なんかよりよっぽどなんかあったのか心配になる。・・・だって誰かに殴られたってことでしょ?どうしたんだろ。


「・・・・ほっぺ・・・痛い?」


 手を伸ばしてお父さんの頬をさするとそのままその手を握られ頬ずりされてしまった。思わずびくついた体もお父さんの本当に優しい顔で手を引けなくなってしまった。困った、こんな前世+今で三十路な私に頬ずりなんて・・・。いろいろアカンでしょ。


 困惑してる私を尻目にいつの間にか反対側のベッドサイドにはお母さんと兄上達が居た。3人とも目が少し赤くなっていて、私のために泣いたのかな?とか思って私も目頭が熱くなる。


「アル、覚えてる?急に魔力を放出してしまったこと。」


 私の頭を撫でるお母さんは私にゆっくりと問いかける。

 魔力を放出?言ってる事は分かる。でも全然覚えていない。てゆうか、今更だけど魔力魔力って大人が真剣な顔で言ってる事に違和感をまだ覚えてる。

 私がここを異世界だと認識するのは結構速かった、と思う。そりゃ真剣な顔されて貴方は魔力過多症なのよ、なんて言われれば変な宗教一家か、ここがもう私の知っている場所ではないのかのどっちか。最初はやべ、宗教か・・・?なんて思ってたけど、私に診察しにくるソフィ先生とか私の知るような聴診器を使ったり道具を使う様子を見せず手を光らせて私の体を調べるもんだからああ、そういう世界なんだって思えた。あとはもうなすがまま状態。


「アル・・・?」


「だいじょぶ、です。」


 とりあえずお母さんを安心させとこうと思う。兄たちも私の言葉に安心したのか強張ってた頬が緩んでいく。


「えーっとおー、それじゃーワタクシはー失礼しまーす。アルティス君もー、大丈夫そうだしー、ねー?」


 メドキルア・・・さんはちょっと怖い。まだ誰なのかよく分かってないし。


「ああ、ありがとう、メドキルア。」


「いーえいーえ。ライアンの息子ならー、当然の事をしたまででーす。でもー、奥様にはー、悪い事をしてしまいましたー。」


「いえっ、あの、こちらこそ早とちりをしてしまって!」


「いえー、奥様は当然の事をしたまでですよー。ワタクシには害はなかったですしねー。」


 そう言いながら何故かお父さんの頬を見て笑うメドキルア。・・・・もしかして、その頬はお母さんが叩いたのか!?


「・・・ゴホン、とりあえず、メドキルアにはまたお礼を贈るよ。」


「あー、期待しないでー待ってるよー。」


 メドキルアさんは私の部屋の窓から飛び降りていってしまった。メドキルアさんは独特の雰囲気だな。喋り方も緩かったし。

 メドキルアさんが飛び降りていった窓を眺めてるとそれに気付いたお父さんがあれはお父さんの仕事仲間の人だよ、と教えてくれた。でも、メドキルアさんは女の人だし見た感じ華奢だった。なのに戦うのかな?この世界は女の人も戦う世界なのか。



 お母さんが私がきっとお腹が空いたままだろうという事で作ったパンユを温めなおしに行くため部屋を出ていくと兄たちがさささっと私に近づいて私が起きるまでに起こったことを耳元で話してくれた。


 曰く、お母さんはどうやら最初メドキルアさんのことをお父さんの浮気相手なんじゃないかって疑って、しかもなかなか関係を話してくれなかったお父さんに切れてビンタを一発、なかなかいい音だったらしい。


 お母さんの怖い一面を聞いてしまった6歳の夜だった。







ありがとうございました。

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